気候変動覚え書き

アクセスカウンタ

zoom RSS 科学者による多数決ベースの気候変動レポート

<<   作成日時 : 2009/08/13 22:42   >>

ブログ気持玉 0 / トラックバック 0 / コメント 0

IPCC報告書は政府関係者を交えコンセンサスに基づいて作成されます。このため時間がかかり最新の研究成果が反映できず、また一部の政治屋により科学的真実がねじ曲げられている、という不満をもつ科学者たちが今年3月にコペンハーゲンで学会を開き、そこで行われた発表をベースに多数決で報告書を作成することにした、という話を昔ききました。取り紛れていたのですが、その報告書が6月に出ていたことに気づき、IPCCの第一部会+α相当の部分を読んでみました。それ以外の部分を合わせても39ページしかなく、簡単に読めます。内容は多数派の意見の総括であり特に変わった主張はなさそうですが、また少数の学者がエイヤで書いたような印象を受けますが、独学しているとどうしても内容が偏るので良い頭の整理になりました。6個の「鍵となるメッセージ(Key Message)」が挙げられています。


Key message 1: Climatic Trends: 近年の観測によれば温暖化ガスの排出、および気候の多くの側面が2007年IPCC第4次報告書 (以下IPCC AR4)予測のほぼ上限の速度で変化している。多くの重要な指標が、現代社会を育んできた自然変動の範囲を超えた。こうした指標としては全球地表平均気温、海面上昇、全球の海水温、北極の海氷の広がり、海洋酸性化、極端現象がある。温暖化ガス排出を抑制しなければ多くのトレンドは加速する可能性が高い。これは気候システムのモードが突然変化したり、不可逆な変化が起きたりすることに繋がる。

Key message 2: Social and environmental disruption: 研究者たちは「危険な気候変動」を議論するための材料を豊富に提供している。社会や生態系は僅かな気候変動に対しても脆弱であることが近年の観測で分かってきた。貧しい国や社会、生態系の恵みや生物の多様性が特に問題となる。2度を超える気温上昇に現代社会は耐えられず、社会や環境が大きく崩壊する可能性が高い。

Key message 3: Long-term strategy : Global Targets and Timetables: 危険な気候変動をどう定義するにせよ、早く、継続的かつ効果的に行動しないと。2020年目標でさぼると後がキツいよ?中核は、信頼感ある長期的な炭素の値段の設定と、エネルギー効率向上と低炭素技術を促進する政策の受け入れ、です。

Key message 4: Equity Dimensions: 地域間、世代間の公平性を考えないとね。

Key message 5: Inaction is inexcusable: 何をすべきか、手段は既に山ほど提案されている。

Key message 6: Meeting the Challenge: 頑張ろう!やれば出来る!人類はもっと幸福になる!

Key message 3以降は超訳です、って見れば分かるか(key message 1や2だって翻訳としての正確さはそもそも目指していませんが)。
で、私はfact findingに興味がある人なのでkey message 1と2を読んでみました。図表番号は原文のままです。

Key message 1: 気候のトレンド
  • いくつかの指標はIPCC AR4予測の上限に近い速度で変化している。海面上昇のように予測を超える速度で変化している指標もある(図1)。
  • 地表の熱の大部分は海洋に蓄えられており (図2)、海水温は気温よりも良い気候変動の指標である。IPCC AR4以降に出た最新の推定では、海は顕著に温暖化しており(図4)、それはIPCC AR4の推定よりも約50%大きい。これを、海面上昇の原因の大部分は近年まで海水の熱膨張だったと説明すると話のつじつまが合う。なお気温 (図3)を見ると2008年は直前の年より顕著に温度が低いが、これは太陽活動が極小となり、かつラニーニャが起きたからである。長期的な気温上昇トレンドは明らかであり、かつIPCC予測の範囲内である。
  • 海面上昇の速度は1993年以降、増加している。これは主としてグリーンランドと南極で氷が溶けたためである。だがこれら極地方の氷床の振る舞いのモデルはまだ初期段階であり、こうした振る舞いのモデル化に基づく2100年の予測は不確実性が高い。別のアプローチとして、過去の気温と海面のデータから関係式を導き、それは今後も変わらないと仮定して求める手法がある。過去120年のデータから求めた見積もりでは、2100年の上昇は1m前後となった。
  • 我々は遠い将来の世代まで続く気候変動の引き金を引いた。温暖化ガス排出をゼロとした後も、最初の1000年間では全球平均気温はほとんど下がらないであろう。海面上昇は2100年以降も続く。海水の熱膨張は少なくとも数世紀続くし南極とグリーンランドの氷の損失も世紀の単位で続く。
  • 北極海の海氷面積が2007, 2008年に大きく減少したのはIPCC AR4以降の最も劇的な進展であった。
  • これはCO2, CH4, N2O等の温暖化効果ガスによるものである。これは19世紀から知られている話で、最も重要な温暖化ガスである水蒸気を問題にしない理由は、うんぬん。
  • 温暖化ガスにより始まる温暖化は、フィードバックにより増幅される。重要なフィードバックとしては上記の北極海の海氷や水蒸気に加え、カーボンシンク(炭素吸収源)が挙げられる。化石燃料から排出されたり土地利用の変化により生じたCO2のうち、陸や海に取り込まれるCO2は過去50年間で減少した。大量排出を続けるなら更に減少すると考えるべき理由もいくつかある。
  • 熱波、台風、洪水といった極端気象現象やモンスーンの変化など社会に大きな影響を与える現象は次節に。
  • 囲み記事1: グリーンランドの氷床: 氷が融ける温度に達した日が少なくとも一日あった地域の面積は、1979年から2008年で50%増加した(図参照)。2007年の夏は特に暑く、南グリーンランドでは全域が融解温度に達し、氷が溶ける日々が10〜20日早く始まり60日以上続いた。
    氷が海に注ぐことによる氷床の損失も融解と並び重要で、これも局地的な気温に左右される。重力計を用いた観測に依れば、グリーンランドの氷床は2003年以降179Gt/yearで質量を失っている(2番目の図参照)。これは海面上昇0.5mm/yearに相当する(現在の海面上昇速度は3.1mm/year)。2007年の夏の質量損失は特に大きかった。これから予想すると、21世紀中の海面上昇は1±0.5mとなり、IPCC AR4の倍となる。
  • 囲み記事2: 全球の炭素循環: 化石燃料と土地利用の変化によりCO2が大気に加わっているため、炭素循環では大きな不均衡が起きている。不均衡の内訳は化石燃料由来が85%, 土地利用の変化によるものが15%。総排出量は1800年から年率2%で指数関数的に伸びているが、2000年以降は3.4%で伸びている。これはIPCC SRESシナリオ群の上限である。
    これまで人間が産業革命以降に排出したCO2の約半分は陸や海が吸収しているが、これら天然の吸収源(CO2シンク)は気候変動や土地利用の変化に対して脆弱である。海の酸性化、海流の変化、陸の吸収源に関わる水や温度や窒素制約の変化のため、これら吸収源の能力が低下する可能性はとても高い。更には、これまで不活性化されていた炭素の貯蔵庫 (熱帯の泥炭地 や極地方の永久凍土など) が活性化され大気中にCO2やメタンを放出する可能性がある。
    これらの効果を定量的に見積もる作業が始まっている。正味の効果はプラスである(つまり炭素循環を考慮するとCO2やCH4は更に増加する筈で、温暖化は加速される)ことに科学者たちは自信を深めつつある。だが増幅率はまだよく分かっていない。ゼロに近いとの見積もりから50%超まで様々な説がある。IPCC SRES A2シナリオでは増幅効果なしで4℃上昇するとされるが、これに当てはめると追加の気温上昇は0.1〜1.5℃になる。永久凍土が溶ける影響は非常に大きいが、まだ定量化されていない (blogmaster注: 定量化は始まったがまだ信頼性が低い、がより正確では?)。

Key Message 2: 社会と環境の崩壊
  • 「危険な気候変動」とは何か、なにが「危険」かのグローバルなコンセンサスはないが、気温上昇を2℃までに抑える事に対して多くの支持が寄せられている。いわゆる「2℃のガードレール」である。2℃未満でも危険はあるとの指摘はIPCC AR4ほかで行われているが、2℃を超えると社会や生態系が適応出来る可能性は急速に減少し、健康被害や水不足や食料不安を通じて社会が崩壊する危険が高まる。
  • 現在は0.7℃の上昇だが、既に多くの社会で健康被害が出ている。熱波、洪水、嵐等々に加え、食料の量や質、水資源、疫病を媒介する生物の生態学的管理など間接的な要因もある。
  • 水系が健康に及ぼす被害で言えば、既にその影響は世界各地で現れており今後の温暖化効果ガス削減がどうなろうとも続く(3月会合のセッション14参照)。気候変動がローカル or 地域レベルで水資源に及ぼす影響は十分には分かっていないことを考えれば、リスク管理等々を行うのが最も効果的だろう(3月会合のセッション29参照)。とはいえ、効果的に適応したとしても僅か1.0〜1.5℃の上昇が世界の多くの地域に深刻な水資源問題をもたらすだろう。都市でも水資源の問題は大きくなりつつある。既に問題となっているし、今後は周囲から環境難民も流入するだろう。
  • 台風などの極端現象は頻度が大幅に増加し、極端さも増す。例えば台風の(平均?)風速が5m/sec増したとき、小さい台風はほとんど増えないが、カテゴリー5のサイクロンの数は倍増する。これは1℃の上昇で起き得る。北大西洋では20世紀にカテゴリー5のサイクロンが300〜400%増加した。(blogmaster注: 20世紀には1℃も上昇してないのに倍増以上?)
  • 海洋酸性化の正確な影響はまだよく分かっていないが、炭酸カルシウムの殻を作る生物は特に脆弱と見込まれている。もしCO2増加が野放しのままならば22世紀にはサンゴのような動物は特に脅かされ、絶滅する可能性もある。地質学上の記録によれば、そうした海の酸性度の変化からの回復には数十万年かかる(本当の回復ではない。絶滅した生物は復活しないからである)。
  • 2℃のガードレールを超えたり、海の酸性化が広がったり、海面上昇が加速したりすると、生態系に対する他のストレスと相まって今後100年間に多くの種が絶滅し、他の種も生育範囲が大幅に縮小して絶滅の危険性が高まり、生態系の恵みが乏しくなり、生物多様性のカタストロフィーが起きる可能性がある。気温上昇を2度以下に抑制し、強力かつ予防的な適応策を施せばこの危機の範囲を限定することは出来るだろうが、完全には防止出来ないであろう(3月会合のセッション31参照)。
  • 危険な気候変動を見積もる方法としては、こうした各種被害から見る方法の他に、tipping pointを見る方法がある。図7にtipping pointが起きうる場所を示す。10年未満で起き得る夏の北極海海氷消失やモンスーンの変化もあれば、数百年〜千年かけて起きるグリーンランド氷床の溶解もある。北極海の海氷消失とグリーンランド氷床の溶解は、1〜2℃の気温上昇で起きるのかもしれない。後者のしきい値は3.1℃との研究もある。それ以外のtipping pointのしきい値の多くは分かっていないが、僅かなリスクであっても危険との意見もある。また、気温上昇だけがトリガーとなるのではない。海の酸性化は海中の溶存酸素を減少させ「海の酸素ホール(marine oxygen hole)」を引き起こすのではと示唆する研究がある。これは海中生物に破壊的な影響を及ぼす。
  • 水不足や食糧不足が起きたときの人間の最もありふれた反応は、移住である。アジアのモンスーン地域が乾燥したり、ヒマラヤの氷河が水を保持する能力を失ったりすれば、インド=ガンジス平原では水が手に入りにくくなり、大きな環境ストレスがかかる。これにより多数の難民が遠からず発生しうる、との懸念が生じている。
  • こうした知見に基づいてIPCC TAR(2001)の「reasons for concern(心配すべき理由)」の図を改訂した(図8)。危険な気候変動が生じうる気温上昇幅は大きく引き下げられた。2℃のガードレールを守れば5個の理由全てで重大な危険は避けうると2001年には考えられていたが、今回、ユニークかつ脅威にさらされている生態系が深刻に脅かされるリスク、極端気象現象が大幅に増加するリスクを避けるには十分ではないとされた。またtipping pointを超えるなどして気候が大規模かつ不連続に変化するリスクは中程度とされた。要約すると、2℃の気温上昇は危険な気候変動を避けるためのガードレールとして最も良く引用されるが、2℃であっても社会や生態系に危険がもたらされるリスクは十分にある。
  • 囲み記事3: 人間の健康と幸福に対する気候変動の影響: scientific factではないので割愛
  • 囲み記事4: 水資源と気候変動: scientific factではないので割愛
  • 囲み記事5: 地球の酸性化: 陸と海の酸性化は、全く異なる人間活動により引き起こされている。陸の酸性化は硝酸と硫酸が引き起こす。1970年代に発生した(以下略)。海の酸性化は大気中にCO2を放出することで起き、その結果はまだ表れ始めたばかりである。最大の懸念はpH、炭酸イオン、重炭酸イオン濃度の変化である。
    証拠が示唆するところに依れば、海の酸性化は多くの海洋生物にとって深刻な脅威であり、我々が多くの恵みを得ている食物連鎖や生態系に影響を与えうる。例えばCO2が450-480ppmになると、熱帯の珊瑚礁では溶解速度が成長速度を上回る可能性が高い。そして、グレートバリアリーフの珊瑚礁では成長速度が19%低下したとの報告が既にある。
    大気中のCO2が450ppmに達すると、極地方の海の多くが、カルシウム化を行う海洋生物の骨格にとって腐食性の海となる可能性が高い。この効果は北極海で最も強くなる。南極海では既にカルシウム化を行うプランクトンの重量減少が観測されている。またpHが低下すれば海は(blogmaster注: 音を伝えやすくなり、遠くの音まで聞こえるようになるため)騒がしくなり、海洋生物に、そして音響を用いる科学や産業や海軍に影響が出る可能性がある。
    海の化学組成の変化は非常に速く(図)、以前起きた海洋酸性化による絶滅の時を上回る。その時は海洋の生態系が回復するのに数十万年かかった。海洋酸性化は大気中へのCO2排出に追従しているので、緊急かつ十分なCO2削減が海洋酸性化を防ぐ唯一の道である。
  • 囲み記事6: 生物多様性と気候変動: 生態系が乱され、また外来種が増加したため種の分布はより均一になりつつある。と同時に人間は直接・間接の土地利用を通じて種の絶滅速度を通常時の1000倍に増加させており、例えば10〜30%の哺乳類、鳥類、両生類は絶滅の危機にある。これらは非線形な変化を引き起こし、種の流入や消滅を超えて漁業の崩壊、淡水系の富栄養化や低酸素化、疫病の発生、小気候の変化を通じて人類の幸福に重大な結果をもたらす可能性がある。
    (この後、生態系を変更することによるメリットとデメリットの議論が続く。なかなか面白いがscientificなfactではないので割愛)
  • 囲み記事7: 気候変動の安全保障上の意味: scientific factではないので割愛

この後の記述を見ると、Key message 4の節の図11には産業革命以降の累積でのCO2排出が載っていたりして面白いですが、力尽きたので割愛。

University of Copenhagen, Synthesis Report from CLIMAT ECHANGE: Global Risks, Challenges & Decisions. COPENHAGEN 2009, 10-12 March, www.climatecongress.ku.dk, from http://www.pik-potsdam.de/news/press-releases/copenhagen-climate-report-201cinaction-is-inexcusable201d

テーマ

注目テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
本 文
科学者による多数決ベースの気候変動レポート  気候変動覚え書き/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる