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zoom RSS 南極氷床下の地底湖の痕跡

<<   作成日時 : 2017/06/09 15:51   >>

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南極氷床の下には数百の地底湖が存在することが知られている。だが湖を汚染することへの配慮等もあって調査は進んでいない。たとえば最大かつ最も有名な湖はボストーク湖だが、ロシア隊が行った調査は、湖の直上までを掘り抜き、水が圧力で噴き出し凍るまでの間に採取された水を分析する、に留まる。その結果、こうした湖が氷床の動きに与える影響や、湖の中での生命活動の理解は進んでいない。
我々は地底湖というユニークな環境を分析する新しい枠組みを提供する。
我々は南極の大陸棚Pine Island湾で堆積物の掘削を行い、最大10mの岩石コアを採取した。そして現在は海底谷となっている水深750m地点の掘削で得たコアを分析した結果、ここが南極氷床が大きく張り出していた最終氷期において地底湖だったことを確認した。堆積物内の孔 (pore) の中の水の塩化イオン濃度は異常に低く、我々が構築したDiffusive-advectionモデルでの分析に依れば、地下湖であった以外には説明がつかない。このことから、現存の地底湖では地底湖を結ぶネットワークが存在すると衛星観測から推定されているが、最終氷期でも同様であったと推測される。
堆積物コアは21000年前の終氷期から現在までをカバーする。湖の堆積物には年代を特定できる成分が事実上存在しない。だがPine island氷河が後退したのは11000年前ごろと推定されており、その頃、湖を覆っていた氷床が除去されて大陸棚になったと思われる。

上記では触れていませんが、その時に得られた岩石コア群を分析した第2論文によれば、Antarctic Cold Reversalと呼ばれる15170-13340年前と推定されるイベント時にSouth Georgiaの氷河は従来推定よりも大きく前進していた(気候感度は従来推定より大きい)ようだとのこと。

初めて地底湖の話を聞いた時には、数キロメートル上の氷床の地形を見れば下が湖であると分かる?ほんまかいな?と思いましたし、時々氷床の高度が急激に変化している、地底湖を繋ぐ地下の河川ネットワークがあるのだ!、、、お前見てきたんかと心の中で突っ込みましたが、ボストーク湖他への掘削もその後行われて成果が出ていることを考えれば、地底湖は本当に実在するのでしょう。地熱で地下湖ができる、は単純な熱バランスの話だし。ならば、この論文のような現象は当然あるでしょう。こんな手法で地底湖の理解が進むと思うとわくわくします。あんなところに掘削に行くのは大変そうですけど。

と同時に興味がわくのが、これ、狙ってやったのか、幸運の女神がほほ笑んだのか?という研究マネジメントの観点です。2本目の論文はabstractを見る限り、Antarctic Cold Reversalでの氷床の張り出しと後退しか論じていません。ということは、岩石コアを採取して回った時、この地底湖の話は想定していなかった、得たコアを分析してみたら想定外の当たりがあった?それとも、海底地形を考えつつ、地底湖の一つくらい当たらないかなあと思って掘削地点を決めた?です。

カミオカンデで小柴先生が、後継プロジェクトと併せて梶原先生がノーベル賞を取りましたが、カミオカンデは本来は陽子崩壊を観測するための装置でした。これは見事に失敗。が小柴先生は太陽ニュートリノとその振動を視野に入れて研究計画を立てていたので成果ゼロにはならなかった。そこに1987Aという幸運の女神が微笑み、陽子崩壊で取り損ねたノーベル賞を見事に取戻し、累積でのノーベル賞は1個ではなく2個になったと聞きます。研究マネジメントのお手本のような話ですが、この論文もそうなのかな、と。

Journal References:
Gerhard Kuhn, Claus-Dieter Hillenbrand, Sabine Kasten, James A. Smith, Frank O. Nitsche, Thomas Frederichs, Steffen Wiers, Werner Ehrmann, Johann P. Klages, José M. Mogollón. Evidence for a palaeo-subglacial lake on the Antarctic continental shelf. Nature Communications, 2017; 8: 15591 DOI: 10.1038/NCOMMS15591

Alastair G. C. Graham, Gerhard Kuhn, Ove Meisel, Claus-Dieter Hillenbrand, Dominic A. Hodgson, Werner Ehrmann, Lukas Wacker, Paul Wintersteller, Christian dos Santos Ferreira, Miriam Römer, Duanne White, Gerhard Bohrmann. Major advance of South Georgia glaciers during the Antarctic Cold Reversal following extensive sub-Antarctic glaciation. Nature Communications, 2017; 8: 14798 DOI: 10.1038/ncomms14798

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