気候変動覚え書き

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zoom RSS 今世紀中の南極からの海面上昇寄与は限定的

<<   作成日時 : 2015/11/24 22:31   >>

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氷床の挙動の観測データを使い氷床のモデルに制約を課すことで、2200年までの南極氷床からの海面上昇への寄与を計算した。
海洋性氷床不安定 (marine-ice-sheet instability, MISI) がAmundsen Sea embayment (ASE) 全体で進行しつつあるかもしれない証拠が増えている。ASEには海面を1m以上上昇させ得る氷がある。他も同様となれば全体で数メートル上昇する。だが十分な精度を持つモデルは開発途上である。氷床が設置する境界線を十分な空間分解能でモデル化すると計算量が膨大になり不確実性を評価できるだけのアンサンブルが作れない。低分解能のモデルではパラメタライゼーションが必要となるが、現在のパラメータは観測データに十分に合わせこまれていない。
そこで我々は理論や地形の制約や、いくつかの海盆での従来あまり評価されていなかったリスクを総合したモデルを作り、A1Bシナリオに基づく計算を3000回行い、ASEの氷の損失のシミュレーション結果とIMBIEプロジェクトによる20年間の衛星観測データ他とを突き合わせてシミュレーション結果の重みづけを調節した。こうした重み付けの調整は初の試みであり、これら制約や調節により氷が失われる速度は制約され、シナリオに対する感度は制限される。
このモデルによれば、南極氷床は2100年までに最大で30cm, 2200年までに最大で72cmの海面上昇に寄与する (95%信頼区間)。この結果はIPCC AR5と整合する。ASEが支配的要因となるが、影響は複雑である。海面上昇の確率分布を計算したところ、2100年までの予測では確率分布のピークが1か所(10cm) だったが2200年までの予測ではピークが2か所 (49cmと6cm) に立った。不確実性は主に氷床と基岩との摩擦がよく分かっていないことに由来する。非線形効果からは海面上昇への寄与が大きく出やすい。低分解能モデルで従来言われてきた2100年までに1m前後、2200年までに1メートル半、といった海面上昇はありそうにない。
Nature掲載論文。
2200年までに最大72cm南極から寄与があるなら、他と併せて1メートル半、はありそうに思いますが、ないんだろうか。BBCの記事では、ここで議論しているのは2200年までだよ、その後もっと溶ける可能性を排除しているわけではないよ、と念を押しています。御意。
海洋性氷床不安定とは(NPO)氷河・雪氷圏環境研究舎の2009/06/09 成瀬氏のブログによれば「氷床周縁の棚氷が消失すると、基盤が海面下かつ内陸に向かって傾斜している氷床では次々に崩壊(氷山として分離)が進み、安定ではない(止まらない)、というもの」です。
当方の素人理解では、これはアムンゼン海の湾など西南極氷床の一部で起きるのではと危惧されている氷床崩壊のメカニズムです。そうした場所では氷床は海面下で基岩と接しています。その氷床と基岩との間に海水が流れ込み、氷を引きはがし、それが更に奥の氷を引きはがし、、、と連鎖的に氷が陸地から引きはがされる、そんな事が海底地形次第では起きるという仮説です。西南極氷床の大半は海面下で接地しています、こうしたメカニズムにより西南極氷床が大規模に崩壊すると、海面が短期間で数メートル上昇するので恐怖のシナリオとされます。例えば私が今いる場所は水没します。といっても「短期間」とは氷河学者の世界の短期間=数百年のようですが。
で、このNature論文ですがあるブログは「モデリングがあんまし大変なんで統計的な方法を試してみた、そしたら数字が出てきた。連中が信じるには、ちゃんと制約を入れると今飛び交ってる過激な見積もりより小さくなる、ってことだな」とまとめています。うーむ簡潔にして要を得たまとめだ。もう少し書こうと思っていましたが蛇足は止めます。

Jonathan Amos, Big Antarctic ice melt scenarios 'not plausible', BBC news, 18 November 2015, from http://www.bbc.com/news/science-environment-34859398
Sea level rise from Antarctic collapse may be slower than suggested, Phys.org, 18 November 2015, from http://phys.org/news/2015-11-sea-antarctic-collapse-slower.html
Journal Reference: Catherine Ritz, Tamsin L. Edwards, Gael Durand, Antony J. Payne, Vincent Peyaud & Richard C. A. Hindmarsh, Potential sea-level rise from Antarctic ice-sheet instability constrained by observations, Nature (2015) doi:10.1038/nature16147, from http://www.nature.com/nature/journal/vaop/ncurrent/full/nature16147.html

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