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zoom RSS 2015年、夏の北極海の海氷の総括

<<   作成日時 : 2015/10/28 20:42   >>

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2012年9月、北極海の海氷面積 (NSIDCによる推定) は3.39e6km^2まで、体積 (PIOMASによる推定) は3.79e3km^3まで減少しました。体積は2008年から5年連続で減少して2008年の半分になっており、私は北極海の海氷が9月には完全になくなる時期が近いと判断、終わりの始まりという記事をエントリしました。その記事は当田舎ブログとしてはかなりのアクセス数を稼ぎました。でもそこから2013年、14年と海氷は大きく増加、粘り腰を見せています。素人判断は駄目ということなんでしょう。あと、ネットでアクセスが多くても。

そこでNSIDC、プロによる2015年夏の総括です。

  • 北極海の海氷面積は2015/09/11に4.41e6km^2を記録。これが2015年の極小となった。衛星観測が始まって以来、史上4番目の小ささである。9月全体の平均は4.63e6km^2でおなじく史上4番目。9月の平均は最低だった2012年より1.01e6km^2広い。
  • 北極海航路とRoald Amundsenルート (北西航路の中でも全行程で北米大陸ぎりぎりを抜けるルート) は9月末時点で開通し続けている模様。Parry海峡を抜けるルート、すなわちM'Clure海峡、Barrow海峡、Lancaster瀬戸等々を抜けるルートは今年、完全には一度も開通しなかった。 (ブログ主注:北西航路は、細かくはカナダの多島海を抜ける方法により3つの航路があります。ここで述べられているのは南側、大陸カナダの沿岸を通る距離が長い2つの航路です。最北の航路は分厚い多年氷がぎっちり詰まっている & 氷が風で吹き寄せられがちな場所ですから簡単には開通しないでしょうね。経路の詳細はWikiの英語版を参照ください)
  • 衛星観測記録がある期間 (1979-2015) の9月の海氷面積の減少率は13.4%/10years。海氷が少なかった年1〜9位は全てこの9年間である。(ブログ主注: 1979-2015の9月の海氷面積について、最小二乗法でトレンドを算出しているようです)
  • 今年の海氷面積の極大は2月25日で、衛星観測史上最低であった。またBeaufort海、特にカナダ沿岸、Kara海では氷の溶け出しは早かった。だが容易には溶けない厚い多年氷が南Beaufort海とChukchi海に冬の間に移動していたこと、5月の気温が上がらなかったことにより6月末時点で海氷面積は史上3位となっていた。7月は高温となり、101,800km^2/dayで海氷面積は縮小した。これは史上4番目の速度である (しばらく細かい記述が続くが割愛) 。2012年の記録を抜く可能性もと思われた時もあったが、8月の気温があまり上がらなかったため史上4位で終わった。
  • 9月のSSTは平均より高かったが、2007年や2012年ほどではなかった。東Beaufort海は溶け出しが早くに始まり、また強い春風が吹いたため海氷は早くに後退した。この風は4月に特に強かったがその後衰えたためSSTは2〜3℃高かったにとどまった。Kara海は今年は非常に高温だったが、Nordic seaでは全般に平年より低温だった。
  • 南Beaufort海やChukchi海に移動していた多年氷は大半が溶けたようである。その結果、多年氷の31%が溶けた (2013年は12%とほとんど溶けず、2012年は逆に38%が溶けた)。1年氷は62%が溶けた。これは2012年 (73%), 2007年 (67%) に次ぐ値である。
  • 9月の海氷面積が小さくなるのは一般に、夏に北極海中心部に高気圧があるときである。高気圧で暖かく良い天気となり、また時計回りに風が吹いて氷をカナダ沿岸へと吹き寄せ圧縮する。典型的だったのが2007年である。低気圧の時は逆となる。
    この観点からは、今年は海氷面積が小さくなるべき年であった。北極海の中心に高気圧があり、気温は全般に高く、特に東シベリア、Laptev海、カナダの多島海で高かった。また2007年とおなじくフラム海峡から氷を南へと押し流す風が吹いた。ただし2007年ほど完全な上記パターンとはならなかった。

    PIOMASによれば今年は2月の時点での海氷の体積は大きかったので、2012年の記録には遠く及ばない筈とど素人な私は考えていましたし、結果的にはそうなりましたが、専門家たちは2012年を抜く可能性もあると一時は考えていたんですね。へえ。

    また、高気圧の時には面積縮小の背景説明として、グリーンランドやカナダ多島海の沿岸には氷が吹き寄せられ、ぶ厚い変形した氷となり、北極海で最も厚い (数十m) 氷が形成される。Ron Kwokの新たな論文ではこの圧縮の様子を2013年について解析し、対象とした領域では5月から10月にかけ面積は23%減少し、厚さは最大で30%増加したことを示した、なんて記述があります。氷の厚さや年齢を見るとカナダ沿岸が常に分厚く古い氷となっているのですが、そういう理由だったんですね。

    元記事の最後にはこの数年間の氷の面積の表とランキングがあります。データは昔発表された数字と微妙に異なっている場合があるそうです。北極点付近を通っていなかった古い衛星の空白域を新しい衛星のデータを使って補間し直したとか、氷の端の推定精度が天候の効果をよりよく取り入れて少し向上したとか。ご苦労様です。Hiatusはデータ処理の誤りによる幻影?!などという話を聞いた直後です、データ処理の精度向上という地味だが大切な仕事に携わる皆様に敬意を表します。

    画像


    この際なのでPIOMASによる海氷の体積の極大、極小の経年変化をグラフにしてみました。面積でこうしたグラフを描くと極大の傾きは極小よりずっと小さいのですが、体積だとそれほど違わないですね。2007年から2012年にかけての勢いを見て、2020年まで持たないと私は思ったのですが、持ち直しました。目分量で傾きを伸ばしてみると2040年ごろに極小は0に触れそうですが、どうなるのでしょう。気楽に書いてますが、私が船会社や港湾会社の担当者だったら胃が痛むだろうな。

    話は脱線しますが、北西航路や北極海航路が開通するしないで気になるのは、その辺りの水深です。海は意外と浅い場所が多く、大型船が通れる場所は限定されていることが珍しくありません。例えば中東から大型船が日本に向かうとき、通れる場所は3つ(マラッカ海峡、ロンボク海峡、オーストラリアの南を回る)しか存在しません。昔、深さ1000mで見た海、2000mで、、、という図を講義で見ましたが、普段みる海の形と余りにも違うので仰きました。海はつながっていて所々に島がある、が逆転して例えば北極海は湖になってしまいます。だから北西航路や北極海航路についても、そこの水深はどうなっているんだろう?が気になっているんですが、海底地形図が見つからない。プロの皆様は百も承知であり検討済の筈とは思いますが、地形図見たい。

    National Snow and Ice Data Center (NSIDC), Arctic sea ice news & analysis, October 6, 2015, 2015 melt season in review, from http://nsidc.org/arcticseaicenews/2015/10/2015-melt-season-in-review/

    National Snow and Ice Data Center (NSIDC), Arctic sea ice news & analysis, September 15, 2015, Arctic sea ice reaches fourth lowest minimum, from http://nsidc.org/arcticseaicenews/2015/09/2015_arctic-minimum/

    Polar Science Center, PIOMAS Arctic Sea Ice Volume Reanalysis, from http://psc.apl.uw.edu/research/projects/arctic-sea-ice-volume-anomaly/
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