気候変動覚え書き

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zoom RSS 気温上昇の鈍化(Hiatus)と海洋中深層への熱輸送

<<   作成日時 : 2014/09/18 06:12   >>

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気温上昇が1998年以降鈍化している、という話があります。気象庁発表の全球の地表の平均気温は1998年が最高で、2013年に至るもその記録は更新されていません。1998年は異常値であり移動平均はその後も上昇し続けていましたし、10年くらい上昇しないのはよくある話です。だから皆当初はあまり気にしていませんでしたが、10年を超えて上昇しないのは多くの関係者の予想を超えていました。10年たてば全球平均気温はベースが0.1〜0.2℃程度上昇するはずで、いくら1998年が異常値といっても新記録が出ないのは不自然です。そこでこの現象はhiatus (連続したものの中断, 休止といった意味) とかslowdownという名前がつけられ、現在のホットトピックになっています。
表層に存在したならばhiatusを打ち消すに足る量の熱エネルギーが大西洋と南洋の300-1500m, 中層から深層に蓄えられていることを発見した。
1970-2012年のブイ、Argo等のフロート、船舶による観測を再解析し、1500mまでの海洋が保持する熱エネルギーを深度別に時系列で算出した。1980年代と90年代には表層 (0-300m) は中深層 (300-1500m) より多くの熱を取り込んでいた。だが2000年以降は逆転し、中深層が取り込む熱が表層を上回っていた。1999年以降に中深層が追加的に吸収した熱量は69ZJ (69ゼタジュール、69e21J) に達する。これは表層を温めるのに使えばHiatusを打ち消すに十分な量の熱エネルギーである。実際、海洋が吸収した熱の総量を見ると1998年以降もそれ以前のトレンドが継続しており、折れ曲がったりはしてしない。これは大気上部 (top of the atmosphere) での放射の不均衡は続いていることを意味する。
Hiatus発生の前後で熱をより多く吸収するよう変化したのは大西洋と南洋で、太平洋とインド洋では変化がなかった。南北大西洋の中深層は、ほか全てを合計したよりも大量の熱を吸収していた。
海洋の熱吸収の変化とHiatusの問題では従来、太平洋での小規模なLa Nina似のパターンが注目されていた。だが今回の解析によれば、La Nina似のパターンは数年程度の短期的なものであり、より長期ではこれに加えて大西洋と南洋中深層への熱輸送が重要である。これは反復性の北大西洋の塩分濃度異常によって引き起こされる。人類による温暖化が始まって以降、海洋中深層による熱吸収は2種類のパターンがあったこととなる。一つは20世紀後半のパターンで、熱の多くが表層付近に留まり、表層は急速に温暖化する。もう一つは21世紀のパターンで、熱の多くが深海に吸収され表層の温暖化は緩やかとなる。後者のパターンは過去の例を参考とするならば、20-35年続く。この変化に対応するのではと思われるAtlantic Meridional Overturning Circulation (AMOC; 大西洋子午面循環) の変動周期は65 - 70年だからである。
上記はThe Economistの記事を基本に、原論文のAbstractからの情報を追加することで書いたような構成になっています。Abstractを参考にこの記事を書き始めたんですが、分かりにくいので書き直したらthe Economistとほぼ同じ構成(の劣化版)になってしまいました。The Econoomistの科学欄のレベルの高さに改めて敬服。でも今回、さすがの彼らもZetta joureという単位はなじみがなかったらしく、最初10e11と誤植してしまいましたごめんなさい、という訂正が記事の末尾にあります。ちょっと可笑しい。

私は放射対流平衡理論をそれなりに信頼しているので、Hiatusを捉えて温暖化は嘘だとか軽々しく言う人を見ると「物理法則ナメんな」と思いますが、記録的レベルのCO2が排出され続ける中でHiatusが本当に起きているなら、説明が必要です。放射対流平衡理論は「地表付近で過剰な熱が発生する」とは言いますがその熱が地表付近に留まり続けなければならない(=気温が上昇する)とは言っていませんし、気候モデルのヤクザさは学生時代に学んだので、大穴が2個や3個あっても一々驚きませんが、大穴の兆候が少なくとも1個見つかったのですから特定して修正しなければなりません。

Hiatusは本当に起きているのかもという話になって以来、実に様々な説明が考えられてきました。本論文のdiscussion節にその様子が要約されています。いわく、沢山の説があるが大きくは2つに分類出来よう。
一つは「Top-Of-Atmosphereでの放射強制力が弱まっている」。要は、CO2の温室効果増加を打ち消すイベントが起きたからだ、という主張ですね。成層圏の水蒸気が減少したから。火山による成層圏のエアロゾルのバックグランドレベルが上昇したから。小さな火山17個が次々と爆発したから。中国が石炭を沢山燃やしたから。時間変化する人間起源のエアロゾル放出の間接的影響。我らが太陽の活動低下。これらの複合要因 ---全て風の便りで聞いたことがある説明ですが、改めて眺めてみてよくこれだけ考え出したなあと笑ってしまいました。Publish or perishに怯えながらSomething newを言うため身を削る思いをした方々に対して失礼とは思うのですが、やっぱり笑ってしまう。
もう一つは、海が吸収し深海に隔離した。本論文はこちらです。ただ、海と言っても色々あります。様々な10年規模の振動、Interdecadal Pacific Oscillation (IPO) やらPacific Decadal Oscillation (PDO) やらが原因との説が展開されていますが、最初(?)の問題は、原因は太平洋なのか大西洋なのか、です。日本人としては当然、太平洋でしょと言いたいところですが、事実はどうなのか。本論文は大西洋が主因との分析。Science誌は本論文に合わせて解説記事を掲載しています。それによると、太平洋こそが主役だ、大西洋の振動も太平洋の影響の派生なのだ、という意見も根強いようです。決着にはまだしばらくかかりそうだ、とのこと。この議論はやると長いので&理解できていないので本記事では割愛します。数年〜数十年周期の振動、の物理的イメージがつかめずにいます。振動と言うからには復元力があるんだよね。それ具体的に何?

私は放射対流平衡理論をそれなりに信頼している、物理法則ナメんなと書きましたが、この論文で行われたデータ解析がそれなりに正しいならば、温暖化は間違いなく着実に進行中、だが温暖化の速度は大きく修正する必要がある、のでしょう。古典的 ---と呼んでしまいます--- な温暖化の理論は、海の熱吸収能力を大きく見誤っていた。CO2他の温室効果ガスの増加に伴って、地表付近には着実に過剰な熱が生成されている。それは海洋中深層の熱エネルギーを地表に持って来ればHiatusが消えるだろうことから推定できる。だが地球の気候システムには、地表付近の熱を効率的に深海に運ぶモードが存在し、そのモードが発現すると、気温に限れば上昇はほとんど止まる。従って、温暖化の速度は、、、半分になると思っていいのだろうか?たぶん違うんだろうなあ。深海が頑張るモードの期間が半分、地表の気温が上昇するモードの期間が半分だとすると上昇速度は半分になりますが、CO2が更に増加した時にもHiatusの期間は気温が上昇しないのか?そもそもそのモードとは具体的に何か、それは気温上昇に伴って変化したりしないのか?話は色々ありそうです。そうした疑問に近い将来確かな答えが出来るとは思えません、この先もびっくり箱が沢山あるんだろうなあ。

Journal reference: Xianyao Chen and Ka-Kit Tung, "Varying planetary heat sink led to global-warming slowdown and acceleration", Science 22 August 2014: 897-903.
Eli Kintisch, "Is Atlantic holding Earth's missing heat?", Science 22 August 2014, Vol. 345 no. 6199 pp. 860-861. DOI: 10.1126/science.345.6199.860

Oceans and the climate Davy Jones's heat locker, the Economist, Aug 23rd 2014, from http://www.economist.com/node/21613161

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