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zoom RSS 2012年、夏の北極海の海氷の総括

<<   作成日時 : 2012/11/21 01:11   >>

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またまた長く間をあけてしまいました。このところ疲れてます、、、体が全ての基本だと改めて痛感します。

北極海の海氷はそろそろ飽きてきました。終わりは見えたよね、と思ってしまうのです。海氷は極小時もまだ広大な面積を覆っていますが、カナダの沿岸警備艇が今年行った調査航海に参加した人間は「多年氷があまりにも劣化しているので、もはや輸送上の重大な障害にはならない。今年はその気になれば北極点まで行けたさ」なんて発言しているようですし。

でもこうした事柄は継続的なウォッチが重要なので、だいぶ遅くなりましたがNSIDCが行った総括を今年も。今年(10/2)の総括では、例年9月に極大となる南極の海氷面積が今年、記録を更新して史上最大となったことが取り上げられているのが目を引きます。

  • 海氷面積の極小は341万km^2 (9月16日)。2007年(417万km^2, 9月18日)の記録を更新し、史上最低。9月の平均は361万km^2。これも2007年 (430万km^2)を更新し史上最低。
  • 今年3月20日の極大と上記極小との差は1,183万km^2。人工衛星観測が始まって以来ダントツの1位。2位は2008年の1,065万km^2。
  • 2012年の気象条件は2007年とは大きく異なる。2007年は例年になく強い高気圧がBeaufort Seaの北とGreenlandに、例年になく強い低気圧がユーラシア北部にあり、南風が東シベリアとChukchi seaに沿って流れ込み、例年より3-5℃高くなってこの地域の氷を溶かすとともに海氷を岸から押し流してオープンな海面が生じた。また海氷を北極海からフラム海峡を通って北大西洋に押し流した。
    2012年は例年になく強い高気圧がGreenlandと北大西洋に、例年になく強い低気圧が西シベリア海にあって東側にBeaufort seaまで張り出した。気温は北極海のほぼ全域で例年より1-3℃高かった。特に高かったのはBeaufort seaで、これは気圧配置により南風となったためである。Barents seaとKara seaでは例年より2-3週間早く氷が溶け始めた。ただしこの地域の気温は夏には例年より低かった。多年氷が解け残る一助となっている。
    8月の嵐を除くと、2012年の気圧配置は2007年ほど氷が溶けやすくはなかった。だが記録は更新された。
  • シーズン始めの氷が薄かったため、氷は天候に左右されやすくなっていた。例えば8月上旬の嵐である。氷はすでに薄くなり劣化していたため嵐により急速に砕け、風と波で溶けた。
  • 今年は面積のみならず体積でも衛星観測が始まって以来最低となった可能性が極めて高い。これはPIOMASのようなモデルと観測を組み合わせた推定からも、1年氷から5年以上経過した多年氷までほぼ全ての氷が減少したことからも推定できる。2007年以降、古い氷が特に減少している。4年氷のみ昨年より僅かに増えたが、これが今年の冬は5年氷となることを考慮しても、5年以上経過した氷は1980年代の20%しかない。

    南極は後述。10/2の総括ではこの他、1979-2012の9月の海氷面積のグラフに最小二乗法(だと思う)を適用すると、直線は10年ごとに13%減の傾き、なんて記述もありますが、転機となったのは1997年と2007年であったという島田先生の解説のほうが直線近似よりはるかに正確に事態を捉えているように見えるので、上記からは割愛。

    今年は8月上旬に数年に一度レベルの大嵐が来たのが一つの特徴となっています。嵐の後、海氷面積は急速に減少しました。嵐が来た直後(8/14)のNSIDCのレポートでは下記のように「嵐は必ずしも海氷面積を減らすとは限らない」と慎重な見方をしていましたが、上記の総括を見ると、減らす方向に働いた、との結論になったのかな。

  • 東シベリア沿岸から8/4北極海に侵入した低気圧は8/6に964hPaに達し、北極海中央に数日間停滞した後ゆっくりと減衰した。当初(8/5)はChukchi seaとEast Siberian seaに温暖な大気をもたらしたが、その後は低温となった。
    北極海では低気圧は海氷を広範囲に広げることが多い。また低温をもたらし雪が降ることさえある。高気圧は海氷を集めることが多い。低気圧が卓越した夏は、高気圧が卓越した夏よりも海氷面積は広くなる傾向がある。
    ただし個々の低気圧ごとに影響は異なる。8月の嵐の場合、大半の地域で気温が急低下したが、南風となった地域では上昇した。東シベリア海の海氷がまばらな地域(海氷密接度がおよそ50%以下)では氷は急速に溶けたし、海氷面積は8/7-9の3日間、連続で20万km^2以上減少した。これは嵐による風と波で氷が砕かれたためとも思われるが、偶然の一致かもしれない。海氷がまばらな地域の氷はすでに溶ける寸前だったからである。

    そして問題の南極。このNSIDCのレポートのシリーズ名はArctic Sea Ice Newsであり南極は基本的に登場しないのですが、南極の海氷面積が史上最大を記録したのを受けて米国では懐疑派の人々が「温暖化が嘘である証拠」「NSIDCがひた隠す真実!!」と主張しており、何か言うべきと考えたのでしょうね。NSIDCのページには南極の情報も山ほど掲載されているのですが。

  • 南極では9/26に海氷面積が1944万km^2の極大となった。これは衛星観測が開始されて以来最高レベルである。9月の平均は1939万km^2で2006年の記録を僅かながら更新。
  • 1979-2012における9月の海氷面積は0.9±0.6%/10yearと僅かな増加傾向。今年の海氷は1979-2000の平均に比べ40km北まで張り出していることになる。1年あたりの絶対面積に直すと1.6万km^2/yearの増加率。なお北極の海氷の減少率は9.16万km^2/year。
  • この冬の気象条件は全体としてほぼ平年並みで、海氷を覆う寒冷な地域と温暖な地域はほぼ同程度である。
  • 以下はコロラド大INSTAARのDr. Sharon Stammerjohnnのレビューによる。南極の大半は温暖化していること、オゾンホールのため成層圏が寒冷化していることにより、南極を周回する西風が強まっている。強風は一般に海氷を広範囲に吹き散らすため、ロス海やインド洋南方では海氷面積は大きく増加している。だが南極半島では地形のため北風となって海氷を南側に吹き寄せており、南極半島の北西付近では海氷面積は急速に減少し続けている(Stammerjohn et al., 2012)。これらの効果は一年を通じて互いに相殺し合っている(Parkinson and Cavalieri, 2012)。
  • 北極と南極の海氷のトレンドを単純比較するのは適当ではない。要因が違うからである。夏は氷の表面が溶けることとアイス・アルベド・フィードバックが支配要因となっており、気候変動の影響が大きい。冬はもうすこし複雑で、寒冷化、風、降雪などに影響される。

    この説明を「温暖化を主張する輩の悪あがき」「やはり地球は温暖化していない」だとは思いませんが、率直に言って「納得した」という気がしません。夏と冬を単純に比較してはならない、はその通りでしょうが、調べて見ると、南極では夏の極小も増加傾向にあるのですね。2012年の夏の極小は史上6位だったそうです。であれば、却って不信感をあおりませんかね。科学者ならもっと厳密に、知的に誠実に、回りくどく(笑)いかないと。それに、氷が吹き散らされるのが原因ならば、氷の隙間は面積計算から除外するsea ice areaのグラフを持ってくれば一発で議論が終わる気がしますが、、、吹き散らされるとき、氷が割れて細かく散らばるので単純比較はできなかったりするのだろうか。この話はNPR (米国でのNHKの親戚) でも取り上げられ「モデル予測ではこんな話、出てなかったんだよねぇ」「海氷面積のモデルは悲惨だからねぇ」とボコられてます。

    NSIDC, Arctic Sea Ice News & Analysis, October 2, 2012, from http://nsidc.org/arcticseaicenews/2012/10/poles-apart-a-record-breaking-summer-and-winter/
    NSIDC, Arctic Sea Ice News & Analysis, September 19, 2012, from http://nsidc.org/arcticseaicenews/2012/09/arctic-sea-ice-extent-settles-at-record-seasonal-minimum/
    NSIDC, Arctic Sea Ice News & Analysis, August 14, 2012, from http://nsidc.org/arcticseaicenews/2012/08/a-summer-storm-in-the-arctic/
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