気候変動覚え書き

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zoom RSS SWIPA 2011による2011年現在の北極の現状

<<   作成日時 : 2011/07/14 21:31   >>

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Arctic Monitoring and Assesment Programme (AMAP) によるSnow, Water, Ice and Permafrost in the Arctic (SWIPA) Assessmentというレポートのexective summaryが出たようです (本文はまだです)。北極圏の現状をコンパクトにまとめています。Key findingsが15個あり読むと鬱になります。summary本文はもっと鬱です。以下は基本的にはsummary本文に依っています。

  • 2005-10年の6年間、北極圏は計器観測が始まった1880年以降で最も暖かかった。湖の堆積物や氷コア、年輪の分析によれば、ここ2, 30年の夏の北極圏の気温は恐らく過去2000年間でもっとも暖かい。これまで見られなかった大気や海流のパターン、例えば太平洋からの暖かい海水の流入、が観測されている。これらが北極圏を変えつつある。
  • 雪氷と気候システムとの間のフィードバック(雪氷アルベドフィードバック)が本当に起きている。気温が最も上昇しているのは秋で、場所は以前は海氷があったが今は失われた領域である。海氷が失われ、海が太陽のエネルギーを吸収し、それを秋に放出して大気を暖めているのだろう。陸において雪に覆われる日数が最も大きく変化したのは春である。雪が溶け始め黒い地表が現れると大地が暖められやすくなるためである。こうしたフィードバックの存在は知られていたが、明確に観測されたのはこの5年間の北極圏だけである。
    北極圏に大きな影響を与え得るフィードバックのうち、8個が正のフィードバックである。負のフィードバックは1個のみである。ただしそれらの大きさはまだ不明な部分が大きく、将来予測を不確実にしている。
  • 積雪はその広がり、日数とも北極圏全域で減少した。初夏の積雪は1966年と比べ、面積にして18%減少した。春、積雪が溶ける時期が早まっているのが主たる原因である。積雪の深さの変化は地域によって色々で、北ロシアでは増加している。
    永久凍土の温度はこの2,30年間で最大2℃上昇している。より寒い地域の方が上昇幅が大きい。永久凍土の南限はロシアでは1970〜2005年で30〜80km北上した。ケベックでは50年間で130km北上した。
  • グリーンランド氷床の質量損失は1995-2000年が50Gt/year、2004-08年が200Gt/yearと見積もられている。ほぼ全ての氷河や氷帽が過去100年間で縮小した。縮小速度は大半の地域でこの10年増加した。特にカナダと南アラスカで速くなっている。それらの総計はたぶん150Gt/yearを超えており、グリーンランド氷床に匹敵する。
  • 2007年のIPCC AR4の海氷の縮小速度予測は過小評価であった。この10年間、北極海の海氷が失われる速度はそれ以前の20年間に比べ増加している。いまや夏も海氷に覆われている面積は1979-2000年平均の2/3に過ぎない。海氷は薄くもなっていることが近年の観測で判明した。
  • 以下の予測は、北極圏で更なる温室効果ガスが放出されるというフィードバックは含まないモデルの結果である。CO2の伸びを過去10年の現実よりも低く仮定しても、北極圏の秋冬の平均気温は2080年までに3〜6℃上昇するだろう。降雪や降雨はすべての季節で増える。最大積雪量は多くの地域で増えるだろう。特にシベリアでは2050年に向けて15〜30%増加すると見込まれる。それにもかかわらず、春の雪解けが早まるため、雪に覆われる日数は北極圏の大半で10〜20%減少するであろう。また夏はより乾燥するであろう。気温が上昇して蒸発量が増え、また雪解けが早まるためである。
  • 年ごとに大きく変動しながらも、今世紀半ばまでには夏の北極海から海氷が事実上消滅するであろう。すなわち、これまで常に存在していた分厚い多年氷はなくなる。
    山岳氷河や氷帽は今世紀末までに10〜30%減少するであろう。グリーンランド氷床は今よりも早く溶けるだろう。だが氷床について正確な定量的予測ができるモデルはいま存在しない。海、雪、氷、大気の相互作用が正確には理解されていないためである。
  • 北極圏の生態系は重大な影響を受ける。雪が減り雪解けが早まると森や湿地帯、湖は渇水となる。永久凍土が溶けると、ある場所では湖ができ、排水され、最終的には乾燥する。その一方別の場所が湿地となる。川や湖や海を覆う氷が失われると水中の生態系が影響を受ける。食物連鎖を通じて大型生物や森林に影響し、人間にも影響が出る。既にアザラシやセイウチの狩り場が遠くなるといった形で影響は出ている。森では永久凍土が溶け利用可能な水が増えているが、病害も広がっている。
  • 物資の運搬やアクセスは、そして日々の生活や商業は雪氷の状態に大きく影響を受ける。夏の海氷が消えるにつれて、北極圏への海からのアクセスは増えつつある。また海が開ける季節が長くなるため、沖合でのガスや石油の掘削は容易になる。ただし氷山は増える可能性がある。その一方、氷の上を移動する地域住民にとっては困難が増す。
    インフラがダメージを受けるリスクは高まっている。陸上では永久凍土の氷がゆるんで道路として使えない期間が長くなる。このため多くの場所で移動が困難となる。また永久凍土が溶けたり雪が増えたりする事を想定せずに作られた建造物(道路や建物や滑走路等々)が変形したり、雪が増えたり氷が川に流れ込んでせき止めたり、氷河湖が決壊したりといったリスクがある。
    北極圏の海岸線の2/3は氷で覆われている。こうした氷が溶け永久凍土が溶け始めると、激しい浸食が起きることがある。Laptev seaやBeaufort seaでは2m/year以上も浸食されている場所があり、多くのイヌイットの村が引っ越しを迫られている。氷河の雪解け水が豊富になることで短期的には水力発電の可能性は増している。だが長期的には氷河が減り発電能力も減少するだろう。
  • 雪氷アルベドフィードバックは現実に起きている。また土壌や淡水系が暖まったり、大昔からずっと凍っていた海底の土壌が溶ける事でメタンやCO2の放出量は増加する可能性がある。だが、これらの効果が総合的に見て地球全体の気候システムにどのように影響するかは分かっていない。
  • 北極海に注ぐ主要な淡水源(河川、降雨、降雪、氷河や氷帽やグリーンランド氷床の溶解)は近年すべて増加している。最近の見積もりでは7700km^3の淡水が近年、北極海に加わった。これは海流の大規模構造を変化させ大陸レベルの気候を変化させうる。また近年の海面上昇の最大の原因は氷河や氷床が溶けることである。2003-08年の海面上昇は全体で3.1mm/yearで、うち北極圏の氷河や氷帽、氷床の寄与分は1.3mm/year (4割)であった。昔の観測よりも北極圏の寄与の割合はずっと大きくなっている。海面上昇の今後には不明な点が多いが、最新のモデルでは2100年には1990年比で0.9〜1.6m上昇すると予測されている。そして北極圏の寄与は大きいであろう。
  • 北極圏に関わる人間は全て、雪氷圏の変化に適応しなければならないだろう。政府や国際機関はリーダーシップを取らなければならないし、インフラへの投資増加が必要である。例えば魚種の変化に合わせた漁獲規制が必要だし、永久凍土が溶けるのに合わせた建築基準が必要である。レスキュー隊は海が変化してリスクが増すのに対応しなければならないし、海や天気の正確な予報も必要である。
    気候変動は北極圏が変わる唯一の原因ではない。社会的な変化の要因等々と合わせた上で総合的な適応策を考える必要がある。
  • 北極の雪氷圏で重大な変化が起きつつあること、これが将来も続くだろうことはほぼ間違いない、は現在の観測や学問のレベルで断言できる。とはいえ我々は、海氷という重要な構成要素について予測を大きく外した。わずか5年前の予測ですら縮小の速度を過小評価した。現時点の予測も不確実性は大きい。変化が起きるタイミングや、雪氷圏の各種の構成要素と地球全体の気候システムとの相互作用(フィードバック)の不確実さは特に大きい。
    いま分かっていない最重要の問いは以下の4つ。 (1) 氷が溶け降雨や降雪が増えて北極海に注ぐ淡水が増えると、北極海とその生態系に何が起きるのだろうか。 (2) グリーンランド氷床が溶ける速度は。 (3) 北極の雪氷圏が変化すると地球全体の気候システムになにが起きるのか。 (4) こうした変化は北極圏の社会や経済にどのように影響するのか、である。研究を協調して行う必要がある。

    この後、提言が続きますがごく常識的なものであり割愛。

    ひとつだけ気になるのが「今世紀半ばまでには夏の北極海から海氷が事実上消滅するであろう」という記述です。海氷の体積を示すPIOMASのデータを見る限り、とても今世紀半ばまで持つようには見えません。下手をすれば10年もたないように見えます。今世紀半ば、なんてことはあり得るんでしょうかね。

    NSIDCが北極海の海氷について2010年を総括したものには、9月の海氷面積のトレンドが載っています。それを見ると、面積の減少トレンドは体積のトレンドよりもずっと緩やかで、消滅は今世紀半ばであっても不思議ではありません。とすると、問題はどちらのトレンドがより正確に実態を表すか、です。面積と体積。氷は溶ける前に薄くなることを思えば、当然、体積です。研究者達はそのことを熟知しているはずです。PIOMASのデータはまだ信頼性が低いと思われているのかな?

    それはそうと、

    「雪氷と気候システムとの間のフィードバックが本当に起きている...こうしたフィードバックの存在は知られていたが、明確に観測されたのはこの5年間の北極圏だけである」と言われると、凹みますね。なんてこった、本当に起きてしまった。

    原発が事故を起こす可能性は誰もが考えた事があると思います。そして人間は生き物として過度に楽観主義者に出来ています。進化の必然でそうなったのでしょう。基本は前のめりで、不運な少数には死んで貰う、が集団としては強い。その結果、危険性は重々承知した上で、私を含め、たぶんなんとかなると思った。そして福島を見て、虚脱感に襲われた。なんてこった、本当に起きてしまった。

    原発の議論では「放射性廃棄物の最終処分地がきまっていないのに進められている」ことがよく批判されます。また様々な名目で補助金が投入されており、本当の意味でのコストが誰にも(恐らくは政府や電力会社にすら)分かっていないこと、が批判されます。私も昔はそう考えていました。でも温暖化の現状を見る限り、その言葉は原発よりも化石燃料を使う火力発電所に対して言うべきという気がしてきます。放射性廃棄物についてはオクロの天然原子炉により被害の最悪が限定できます。20億年前という生物への影響をあまり考えなくて良い時代の話ではありますが、20億年間にわたって放射性廃棄物がほぼ原子炉内(最初の場所)に留まっていたと断定できるからです。そして広島とチェルノブイリと福島を通じて我々は原発について「本当の最悪とは何か」を少しは理解しました。自衛隊のヘリが空中から散水するのを見ながら、あれが失敗したら次は?を私は考え、余りの結論に震えました(ネルソン氏が暗示している程度の事態です)。でも火力発電所の最悪とは、コストとは何なのか、我々はまだ知らない。

    この記事のかなりの部分は羽田の国際線の桜ラウンジで酔っぱらいながら、飛行機が次々と離発着するのを見ながら書きました。エコノミーのチケットであってもここに入れるだけ、私は飛んでいます。ここは景色がすばらしい。展望台なみに滑走路が見え、気分良く仕事ができます。でも、こうして離発着する飛行機が出すH2Oが (CO2よりもH2Oが) 温暖化を引き起こしている。私はそのことを気象学の専門教育を受けた人間として理解しています。そして私は飛ばない≒失業するという決断ができない。

    Snow, Water, Ice and Permafrost in the Arctic (SWIPA) 2011 - Executive Summary, from http://www.amap.no/swipa/
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