気候変動覚え書き

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zoom RSS 小氷期の原因は本当に太陽なのか?

<<   作成日時 : 2011/06/07 00:18   >>

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太陽は気候システムの原動力である。だから大きな気候変動は太陽の変動が引き起こすのだ、と人は往々にして考える。だが太陽の外殻(outer part)の熱容量は巨大であり、1000年 or 10年単位で見たとき、太陽の温度、そして太陽放射はごく僅かしか変動していない。衛星観測によれば近年の10年単位の周期変動では放射は0.1%しか変化しない。
だがここで2つのグループが100年単位での変動について驚くほど異なる見積もりを発表した。SchrijverらのGeophysical Research Lettersへの、およびShapiroらのAstronomy and Astrophysicsへの論文である。

17世紀後半のマウンダー極小期のtotal solar irradiance (TSI) (古くは太陽定数、solar constantと呼ばれた値、定数ではないので最近はTSIと呼ぶらしい) は異常に低かったとされる。この期間は気温も(少なくとも北半球の一部では)異常に低く、小氷期とも呼ばれる。そこで小氷期と現在の気温、そしてマウンダー極小期の現在のTSIを比較すると100年単位の太陽放射の変動が気候に与える影響の大きさを絞り込むことができる。
古くは太陽に似た恒星の観測から、100年単位でのTSIの変動は大きいと考えられていた。だが後の観測ではそうした結論は得られず、また太陽に適用してOKとの証拠も得られなかった。現在は黒点数、太陽の磁束、TSIの関係式を現在の太陽を観測することで導き、それをマウンダー極小期に当てはめることでTSIを求める。マウンダー極小期の黒点数は当時の観測記録から、磁束は氷コア中の宇宙線起源の同位体他から求める。こうした方法で求められたTSIの変動は約0.1%で放射強制力に換算すると0.24W/m^2、11年周期と同程度である。これは20世紀における温室効果ガスによる放射強制力の変化、2.5W/m^2にくらべ小さい。

この状況において、Schrijverらは0.24W/m^2でも大きすぎると主張。Shapiroらは1W/m^2の方がもっともらしいと主張。両者の違いは太陽の「静か」な、活動的な領域を結ぶ大規模な磁場がない領域の解釈の違いによる。
Schrijverらは2009年の状況、近年では活動が最低となり黒点が皆無な長期にわたって現れた、マウンダー極小期に少し似た時の状況を解析した。その結果「静か」な領域については2009年とそれ以前の黒点極小期とで違いはないことを発見。これがマウンダー極小期の活動レベルの下限 or ベースラインであり、マウンダー極小期のTSIは従来考えられていたよりも現在の値に近いと結論づけた。
その一方Shapiroらは、高解像度の観測では無数の微細な磁場構造 (Schrijverらが用いた画像では解像できていない) が太陽表面に見えること、この微細構造を考えれば最も「静か」な領域にも磁場の強弱はあり、それが散逸するならば活動レベルは更に低下するだろうことを指摘。この変化の効果を見積もれそうな長期観測は存在しないので、この変化がTSIに及ぼす影響と22年変動とは相関があるとShapiroらは仮定。22年変動は氷コアの宇宙線起源同位体に痕跡が残っている。この仮定の正当性は検証されていないが、この議論が正しいならばSchrijverらは過小評価ということになる。

更に話を混乱させるのが、TSIはそもそも、太陽が地球の気候に及ぼす影響を表す指標としてベストではないかも?という突っ込みである。近年の人工衛星観測によれば、紫外域の太陽放射の変動は従来考えていたよりずっと大きい。TSIの変動の大半は紫外域の変動に由来する。そして可視および赤外域の変動はTSIとは逆相になっている。ならばマウンダー極小期のとき、紫外域の太陽放射は今よりもずっと弱く、可視および赤外域は今よりも強かったのかもしれない。こうした観測には疑問の声もあるが、成層圏のオゾン濃度はこの観測を支持しており軽々しく無視してよい議論ではない。紫外域の太陽放射は成層圏に影響し、ひいては対流圏に影響する事が知られている。

という状況であり、確定的な事はまだ言えない。

なお、こうしたTSIの議論は20世紀の気候変動への太陽の寄与の議論にはほとんど影響しない。寄与は10%のオーダー or それ以下と考えられているが、こうした数字の多くは頑健な統計モデルを使い太陽放射の「形」の時間変化から導かれたもので、強さの変化から導かれたものではないためである。とはいえ、こうした議論には注意を払うべきなのは間違いない。
上記Nature Climateの解説記事は割と中立な感じで書いてありますが、AAASの解説記事 (の中のコメント) ではSchrijverらは叩かれていました。どうなんでしょう。

上記は結構そのまま訳してしまいました。著作権上まずいだろうか。細部は例によって原文に忠実ではありませんが。元記事、無駄な記述がなく情報が密に詰まっており、述べるべき事が述べるべき順番で述べられているので、手を入れにくいんですよね。

それに比べ、いま添削している英文の出来の悪さは、、、読んでいて苦痛。しかもこの添削、頑張っても私の給料あがらない。

Journal reference: Schrijver, C. J., Livingston, W. C., Woods, T. N. & Mewaldt, R. A. Geophys. Res. Lett. 38, L06701 (2011).
Shapiro, A. I. et al. Astron. Astrophys. 529, A67 (2011).

Mike Lockwood, "Solar physics: Shining a light on solar impacts," Nature Climate Change 1, 98-99 (2011) doi:10.1038/nclimate1096, from http://www.nature.com/nclimate/journal/v1/n2/full/nclimate1096.html

Did Quiet Sun Cause Little Ice Age After All? by Govert Schilling on 26 May 2011, from http://news.sciencemag.org/sciencenow/2011/05/did-quiet-sun-cause-little-ice-a.html

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