気候変動覚え書き

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zoom RSS 全温室効果に占めるCO2の割合

<<   作成日時 : 2010/12/15 00:39   >>

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10月15日の論文ですから、ちょっと古い話です。この話は記録のためメモしておきたかったのですが、この頃は仕事が修羅場で手が回らなかった。いえ、今も仕事は山ほど貯まっているのですが。
同一グループによる論文2件。
赤外線を吸収する各々のガスや雲が全温室効果に占める比率、は気候変動についての世間一般での議論において引用間違いが最も多い数字である。明快な引用元を提供するため、我々は既存の文献をレビューし、またゴッダード研究所のModelE放射モジュールを使い、各々の要素が占める比率を求めた。各々の要素が重なり合っている場合は、単刀直入な方法で分配した。結果は水蒸気が約50%、雲が約25%、CO2が約20%で、その他 (オゾン、メタン等のガスとエアロゾル) が残り5%を占めていた。CO2が倍増した場合についても計算を行ったところ、全体としての温室効果は大きく増加したが、それぞれの比率は事実上変化しなかった。これは水蒸気や雲によるフィードバックの重要性を示している。JGR掲載論文。
「明快な引用元を提供するため」という表現(abstractより)がお茶目。50%、25%、20%、5%と妙にキリがよい数字ばかりなのが気になります(昔みた数字はもっとゴチャゴチャしていた)が、論文のabstractとNASAのプレスリリースを疑う理由もありません、そのまま書いておきます。

先日、電車で座っていたら、隣のおばちゃんが温暖化懐疑論の本を読んでいて、思わず横目で読んでしまいました。「温室効果が最も大きいガスは水蒸気である。私は昔からそう指摘し続けてきたが、最近ようやくIPCCもそのことを認めるようになった」をいをい、ちょっと待てい。現在の気象学者はすべて、真鍋淑郎先生が1964年のManabe=Strickler論文で打ち立てた、放射平衡対流理論に基づいて仕事をしています。本エントリの論文もそうです(って私は本文読んでないけど、そうでなければJGRに通るはずがない)。気象学史に永遠に残るこの真鍋論文 ---IPCC設立よりずっと前--- で取り上げられた温室効果ガスは水蒸気、CO2、オゾンです (上記論文の例えば図6cをご覧ください)。その先駆となる1896年のアウレニウス論文 (ノーベル賞を受賞された大先生です) で取り上げられたのは水蒸気とCO2。水蒸気が重要なんてのは大昔から知られており計算に入れている(というか、入れないと計算がじぇんじぇん合わない)のであって「自分が言い続けた結果、ようやく最近認めるようになった」なんて、見る人が見れば大嘘だと一発でバレるのに、平気で書くんだよなあ。温暖化に疑問を持つのは大いに結構なことですが、嘘はいけません。

次。
CO2は単体としては各種の温室効果ガスの中で最も重要なものとされている。水蒸気や雲の方が温室効果は大きいのにこのように言われるのは、CO2はO3やN2O, CH4やフロン同様、大気中では凝結せず、大気中にずっと留まり続けるからである。水蒸気は全温室効果中75% (水蒸気50%、雲25%) を占めるが凝結する。
CO2ほかの大気中では凝結しない「非凝結性ガス」と水蒸気のような凝結するガスの役割を示すため、非凝結性ガスとエアロゾルをゼロとし、水蒸気はそのままで気候モデルを走らせた。すると水蒸気は雨や雪となって大気から取り除かれ、地球は凍り付いた。このことから、水蒸気と雲の温室効果は大きいが、非凝結性ガスを補助しているのであって単体では温室効果を維持できないこと、究極的には地球の温室効果の大きさはCO2等の非凝結性ガスで決まることを本実験は示している。Science掲載論文。
NASAの解説記事いわく、CO2の温室効果は全体の20%に過ぎないが、非凝結性ガス25%のうち20%ということを考えれば、全体の20/25 = 80%とも見なせる。

この論文内容それ自体は、この分野の知識があれば容易に想像可能です。想像するに、大気力学の授業では「先生、CO2がなくなったらどうなるんですか」「水蒸気は全部雨になって落ちちゃうに決まってるでしょ、不安定なんだから」みたいな質疑がこれまで散々交わされてきたのではと思います。従って、新規性という意味ではこの論文は価値ゼロです。でも社会からの関心が高い事柄を分かりやすく示したことが認められて掲載されたんでしょうね。私が以前関わっていた論文誌にはない評価方法です。そんな理由で掲載を認めろと言ったら「解説論文じゃないんだし」と言って編集会議が大荒れになったこと疑いない。Science誌の評価項目ってどうなってるんだろう。

Journal reference: Schmidt, G.A., R. Ruedy, R.L. Miller, and A.A. Lacis, 2010: The attribution of the present-day total greenhouse effect. J. Geophys. Res., 115, D20106, doi:10.1029/2010JD014287.

Journal reference: Andrew A. Lacis, Gavin A. Schmidt, David Rind, and Reto A. Ruedy, Atmospheric CO2: Principal Control Knob Governing Earth’s Temperature, Science (15 October 2010), Vol. 330, No. 6002, pp. 356-359; DOI: 10.1126/science.1190653

Kathryn Hansen, NASA's Earth Science News Team, Carbon Dioxide Controls Earth's Temperature, NASA News, October 14, 2010, from http://www.nasa.gov/topics/earth/features/co2-temperature.html

Publication Abstracts, NASA, from http://pubs.giss.nasa.gov/cgi-bin/abstract.cgi?id=sc05400j

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