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zoom RSS 2010年春現在の北極の氷の状況

<<   作成日時 : 2010/05/22 10:02   >>

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北極海の海氷面積は2007年の夏、それまでの最低記録を大幅に下回り、この調子だと2070年や2040年ではなく、最悪10年以内に事実上(=島影や海岸近くなどに残る氷は無視すれば)氷がない北極海が出現するかもしれない、という話になり騒ぎになりました。本ブログでも何度か記事にしています。
その後、2008, 2009年と2年連続して順調?な回復を示し、長期トレンド(2040年とかの消滅に向けゆっくりと減少)に復帰しつつある、かに見えますが、いやいや、面積ではなく体積で見れば2008年、2009年も酷い年だった、順調な回復なんてとんでもない、という声もあります。で、climate progressというジャーナリストさん?のブログにリンク集的に使える多数のグラフを掲載した記事が出ていたのでビールを飲みながらグラフをじっくり眺め、リンク先の説明を読んでみました。

PIOMAS 元記事の冒頭にあるのがPolar Science CenterのPan-Arctic Ice Ocean Modeling and Assimilation System (PIOMAS)による海氷の体積のアノマリのグラフ。説明によれば、現在、海氷の体積はリアルタイムでは観測できない、衛星、潜水艦、繋留ブイ、フィールド観測のデータを数値モデルに同化して推定することになる。PIOMASはこれを1979年以降のデータについて「リアルタイム」で行うシステム。3〜5日毎にデータをアップデートするとのこと。PIOMASのデータは様々な観測と付き合わせて検証されているそうで、例としてNASAのICEsat衛星との比較が挙げられています。
そうした処理により推定された海氷体積は、2007年の夏に減少して最低記録を大幅に更新し、その後も微減に。分厚い多年氷が急速に減っており、面積は回復しても体積は回復せず、ということらしい。その結果、直近の春と秋はそれぞれの季節での史上最低となっています。2010年3月の海氷体積は20,300km^3、1979年の極大に比べ38%減。2009年9月は5,800km^3、1979年の極小に比べ67%減。
1979-2009のデータを同化した結果として推定される季節変化は4月が極大で28,600km^3、9月が極小で14,400km^3。元記事(climate progress)のグラフはそこからのアノマリ(とトレンド直線、1σ、2σ)を示しており、トレンド直線は10年ごとに-3400km^3の減少。

FreshNor 元記事の最後にあるグラフが、FreshNorプロジェクトがまとめた、様々な海氷の体積推定です。こちらは推定方法がよく分からないのですが、Naval Postgraduate School (NPS) による1979〜2004の海氷体積を連続的に推定したモデルの値、ピンポイントの観測値、など様々な値が取りまとめられています。
NPSモデルによる連続グラフは、1990年代半ば過ぎまでは上下動しながらほぼ一定、だがそれを過ぎると急速に減少、となっています。で、90年代後半以降の減少率は研究毎に色々ながら、最大で-1460km^3/year, 最小で-1070km^3/yearとなる。そして、いずれにせよ事実上氷がなくなるのは2010年代半ばと推定されるようです。

NSIDC National Snow and Ice Data Center (NSIDC) の海氷面積 (海のうち、海氷が15%以上を占めている領域の面積) のグラフも掲載されています。こちらは体積ではなく面積です。今年は海氷面積が極大に達するのが遅く、4月となった模様です。今年は面積的にはかなり回復し4月は久々に長期平均付近まで増加していたのに、5月に入って急速に減少し、今この瞬間NSIDCの元データを見ると-2σを突き抜けて2007年を下回っていますね。先は長く、今年の極小が2007年を下回るかを議論するにはまだ早いですが。
元記事には、著者がNSIDCの知人に「海氷の体積は?」と問い合わせた返答が載っています。いま解析している最中だ、過去3年間が観測史上最低であることは間違いないが、3年間の中での順番は現時点では分からない、という返答だったとのこと。

Catlin Project 別記事ですが、保険会社Catlinが探検家と科学者を募り、北極海の氷をカナダのNunavutから歩いて横断し、氷の厚さ等を実測するというプロジェクトの顛末が述べられています。これは昨年も行われて途中で失敗したプロジェクトですが、今年も行われ、今回は60日で500海里を踏破し目出度く北極点に到達したとのこと。おめでとう御座います。関係者の皆様、本当にご苦労様でした。今年のメインテーマは海の酸性化だそうで、北極点でも氷をボーリングして海水を採取したそうです。結果は何らかの学術論文としてそのうち発表されると期待して、それ以外の小話的な話を。
海氷が予想を大幅に上回る速度で動いていたとのこと。このため268海里踏破すればよい筈が500海里踏破することに。たとえば初日、大きく南に流されて元に戻るのに10日かかったし、極点付近では一晩(ってどれだけ?)に3海里流された。これほど氷が動くのは、参加者たちの北極探検経験では初めてであり、更には氷は非常に薄く、一番厚い所を選んで歩いているのに3〜4インチ、が何日間か起きたし、果ては泳いで渡らなければならなかったり、テントを設営した氷が割れてしまったりもしたとのこと。

*****
こう書いてくると、いかにも氷の体積は急速に減少しており遠くない将来に海氷のない夏の北極海が実現するような気がしてきます。分厚い氷が溶けるとき、最初のうち主として減少するのは厚さであり面積ではない、ある程度薄くなったところで氷は急速に縮小し始め、割れ始めて溶けてしまう、はかき氷 (を作った残りの円盤状の氷) と格闘した小学生なら常識です。急速な縮小が始まるのは遠くない、という気になってきます。
でもそれは本当なんだろうか。私は海氷を相手にした経験がないので観測の精度とかの感覚がなく、こうした文章を読んでもどうも現実感がないのですが、とりあえず気になるのは、PIOMASとFreshNor(のNPS)はどちらも海氷の体積を推定している筈なのに、グラフの形がずいぶん違うことですね。減少率の推定値もPIOMASは-3400km^3/10year, FreshNorは-1460〜-1070km^3/yearとかなり違います。ではどっちが真実に近いんだろう、そもそも推定対象となっている領域は正確に一致するのだろうかとか、FreshNor/NPSは途中でトレンドが大きく変わるのが特徴的ですが、その変化に対応するイベントって何だろう、一方PIOMASはトレンドの変化は無かったとしているがそれは本当だろうか、とか考えますが私の知識では全然歯がたたない。この辺りが、2007年に海氷の大幅減少が起きたときに皆がパニックした原因の一つなんだろうか?
でも、より楽観的(?)なPIOMASでも、2009年9月は史上最低で5800km^3だった、そしてトレンドは-3400km^3/10year、と言っています、ならば2020年過ぎには事実上氷がない北極海が出現してしまうことになります。氷のない北極海が出現する日は遠くない、とあちこちで言われていた事の具体的内容は、これだったんですね。

Joe Romm, 'Arctic poised to see record low sea ice volume this year,' climate progress blog, May 13, 2010, from http://climateprogress.org/2010/05/13/arctic-ice-volume-nsidc-polar-science-center/#more-22481

'Arctic team reports unusual conditions near Pole' by David Ljunggren, Reuters, May 17, 2010, from http://www.reuters.com/article/idUSTRE64G5S020100517

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