気候変動覚え書き

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zoom RSS お前はもう1996年に死んでいる

<<   作成日時 : 2010/01/19 18:57   >>

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あるブログに「悪いニュースです、今日を気分良く過ごせなくなること請け合いです、ごめんなさい」と書かれたニュース。

パイン・アイランド氷河(図)がヤバいという話は前々から出ています。例えば2004年には同氷河が5.5m/dayで流れている、1970年代に比べ25%アップだといって騒いでいましたが、2009年8月には人工衛星観測に基づきこの氷河が16m/dayで流れている、1994年の見積もりでは600年間はOKな筈だったがあと100年で消滅する計算だと報告されてます。とすると西南極氷床が危ういかも。氷河・氷床ってこれほどまでに気候変動に鋭敏に反応するものなのか?と科学者たちが怯えていましたが、今度は「お前はもう1996年に死んでいる」という理論計算が出たらしい。パイン・アイランド氷河の最大の問題点は、氷の重さで陸が沈んだため氷と地面が接するラインが海の中にあり、周囲の海水がそのラインになだれ込んで氷をどんどん剥がして溶かしているらしいことですが、New Scientistの記事とGRLのアブストラクトを合わせると。

理論計算に依れば、パイン・アイランド氷河は既に力学的に不安定になっており、point of no return (引き返し不能点) を超えてしまっている可能性が高い。これまで同氷河は徐々に氷を失ってきていたが、100年以内に崩壊して50%の氷を失い、海面を24cm上昇させる勢いである。理論計算は楽観的なものであり、おそらくこれよりも早く崩壊する。

パイン・アイランド氷河はアムンゼン海に流れ込んでいるが、この海は太平洋の南端にあり、気候変動で暖まっている。これに伴い海面が上昇し、暖かい海水が氷床の下に潜り込み、氷床が下から溶け、氷床が接地するラインが陸に向かって動いている。こうした動きは接地ラインの位置や変化に敏感に反応するが、現行モデルの大半はそうした特徴をほとんど考慮していない。
そこで我々は空間3次元と時間とを入れた接地ラインの理論を開発した。接地ラインに関わる各種の力のバランスに基づいて、正準Stephan条件に類似した差分方程式として表現している。この理論をいくつかの海底地形モデルに適用してみた。うち一つはパイン・アイランド氷河を想定したもので、氷河の流れ方向と、流れを横切る方向の双方で海底の深さを変化させている。
計算では、海面が上昇し接地ラインも上昇する、それが止まらなくなり引き返し不能となるポイントが見つかった。これは南極の海底に小さな盛り上がり (? small lip) があるため。氷河の底は海岸線から深くなっていき、盛り上がりで少し浅くなった後、大陸棚に向かって再び深くなっていく。そして理論計算のロバストな(他の条件に左右されない)結論として、傾斜が逆になっている領域では接地ラインは不安定になり内陸へと食い込んでいくことが分かった。すなわち、接地ラインが盛り上がりよりも外洋側にある場合には気候変動による小さな擾乱が起きても氷河の氷の量は小さくしか変動しない。だが接地ラインが盛り上がりを超え、少し深くなる領域に入ると気候変動は力学的不安定を引き起こし、氷が大規模に失われることになる。
この不安定領域に入り込んだのは、おそらく1996年。現在は氷床が加速度的に縮小する準備万端のフェーズ。計算ではパイン・アイランド氷河は100年以内に200km後退する。後退は海岸線に向かう傾斜のどこかで止まり、安定する。
New Scientist誌はBritish Antarctic SurveyのRichard Hindmarsh氏に解説を依頼してます。氏によれば、氷河の後退が止まるまでに氷の50%は失われ海面は24cm上昇する。そして現実にはパイン・アイランド氷河は完全に失われる可能性がある。パイン・アイランド氷河の脇にあるThwaite氷河が後退すればパイン・アイランド氷河も次の谷まで後退し海面は52cm上昇する。そしてモデル計算ではThwaite氷河も不安定領域に突入しているとのこと。

で論文の著者いわく、モデルは簡略化されており、いくつかの重要な物理学的ポイントを省いている。そして観測によれば、パイン・アイランド氷河の接地ラインの後退速度は本理論モデルよりもはるかに速い、、、おーい、理論屋としてそれはまずいのでは。

上記の記述(盛り上がりで傾斜が逆になると不安定が起きる)は不思議です。本論文は全文が公開されているので読んでみようかな。数式が山ほど出てきており、そんなものは完全に忘れているので、どこまで追えるか疑問ですが。

それはそうと。

私、西南極氷床の崩壊を見るほど長生きすることはないと思っていましたが、見られちゃったりするのだろうか。いやぁ、人生は驚異に充ち満ちているなぁ。

Journal reference: Richard F. Katz and M. Grae Worster, 'Stability of ice-sheet grounding lines,' Proc. R. Soc. A published online 13 January 2010, doi: 10.1098/rspa.2009.0434 , from http://rspa.royalsocietypublishing.org/content/early/2010/01/13/rspa.2009.0434.short

Major Antarctic glacier is 'past its tipping point', 18:16 13 January 2010 by Shanta Barley, New Scientist, from http://www.newscientist.com/article/dn18383-major-antarctic-glacier-is-past-its-tipping-point.html

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