気候変動覚え書き

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zoom RSS 2009年の気候学; Natureによる総括

<<   作成日時 : 2009/12/24 20:45   >>

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Natureのclimate change reportは2009年を、気候学にとって多くの重要な発見があり、ぎょっとするような議論が起きた年であった、と総括しています。

以下、毎度のことですが、必ずしも原文に忠実に訳してはいません。どうしても意味がわからず原論文を見たところもあるし、冗長なところを切ったり、パラグラフを私の趣味で切り直したりもしてます。

1. 温暖化が地球全てに及ぶ
2009年は酔いが覚めるような(でも必ずしも驚きではない)ニュース ---全体として南極は暖まっている、で始まった。以前より南極半島の一部は急速に暖まっていることが示されていたが、大陸部分の一部、特に極の周辺、は不可解にも冷えているように思えた。
1月、気候学者Eric Steigらは温暖化が南極の多くに広がっていると報告(Nature 457, 459-462; 2009)。衛星観測を過去の気象観測と組み合わせることで南極の気温を補間。西南極が0.1℃/year (per decadeの間違い?) で温暖化していたことを発見した。衛星観測以前は明確に寒冷化していたが、これは少数のステーションからのものであった。
この発見を10月に発表された論文が支持。GRL (36, L20704; 2009) でLiz Thomasらは南極半島の南西部で採取された氷のコアが過去50年間で2.7℃の温暖化を示したことを報告。
これらの報告は、人為起源の温暖化が地球全てで起きていることを示すのに必要な証拠である。「温暖化が7つの大陸全てでモデルが予測したように起きているのを今や我々は見ているのだ」とSteigはNY Timesに。

2. 寒冷化を巡る混乱
3月、気候の予測可能性についてのやや技術的な論文が、現在は地球全体が寒冷化する真っ最中と示唆したと広く誤解され、それを正すのに多くのエネルギーが費やされた。
Kyle SwansonとAnastasios A. TsonisはGRL (36, L06711; 2009) で、20世紀において気温は全般的に上昇したが、明確な寒冷化フェーズと温暖化フェーズ (各々約30年) が温暖化のトレンドに重なっているとした。著者らはこうしたフェーズの移行が自然の変動、例えばEl Ninoのような短期間のイベントで説明できるかを研究している。異なるタイプの自然変動がシンクロする場合があり、それによって気候は新しいフェーズに移る。我々は2001〜02年に新フェーズに入ったかもしれない、であれば気温が再度上昇し始める前にしばらく小休止があるかも。
様々な議論が行われた。そしてSwansonはreal climateブログに書く。重要なことだが、我々は温暖化の小休止を議論しているだけであって地球全体が寒冷化しているなんて言っていない。
9月、ジュネーブのWorld Climate Conferenceでこの問題が再浮上。Mojib Latifは気候を10年単位でより正確に予測する必要を述べ、そして気候の自然変動を考えたとき、10年、もしかすると20年、気温が現在よりも低下する理論的可能性を指摘。いくつかのメディアがLatifは寒冷化を予測したと報道し、懐疑派たちがそれをはやし立てた。
いずれの場合も研究者たちは全般的な温暖化は起きているし今後も長く続くということを受け入れているのだが、それは伝言ゲームの中で失われた。
11月、英国の気象庁とNatural Environment Research Councilと王立協会は、この10年間は記録にある限りで最も暑かったとの声明を発表。

3. 海面上昇の数字
気温が上がると海面がどれだけ上昇するか、2009年を通じて少し進展があった。2007年のIPCC報告は2100年までに最大59cmと見積もった。ただしこれは動的なプロセス(近年観測され始めているグリーンランドや南極の縁での氷山の分離など)を含まない保守的な値であった。
3月にコペンハーゲンのClimate Change Congressは2100年までに1m上昇し得ると報告。この上昇の一部は熱膨張。従来の見積もりより50%早く海が温暖化していることが分かったため。残りはグリーンランドや南極の氷床が従来予想より早く溶けているため。
9月、Hamish Pritchardらがグリーンランド、南極の両氷床は予想よりずっと早く溶けてることを発見 (Nature 461, 971-975; 2009)。これは'dynamic thinning (動的なやせ細り)'と呼ばれる、温暖化した海水が氷床のふちの下をくり抜くプロセスにより起きていた。このプロセスは十分には理解されていないが、2100年までに1mすら超えて海面が上昇することは可能らしい。
だが話はこれで終わりではない。7月、Mark SiddallらはIPCCの予測は案外妥当かもと示唆(Nature Geosci. 2, 571; 2009)。過去におきた温暖化に対する海面の反応を計算し、2100までの温暖化が1.1℃に留まるなら海面は7cmしか上昇せず、6.4℃でも84cmしか上昇しないとした。

4. ターゲットのお話
引き続きターゲット ---破局的な温暖化を避ける上で大気中のCO2濃度を安定させるべきは450ppmか350ppmか、地球全体でのピークは2015年か2020年か--- の議論は行われたが、ある科学者グループが、あるナイスで切りの良い数字に集中する方が簡単だと示唆。
1兆トン。これが、もし我々が2℃超の温暖化を避けるため設定すべき、累積での排出量だとMyles Allenら (Nature 348, 1163; 2009)。我々は1750年以来既に半分以上を排出済なので、我々がもて遊んでよいのは1兆トンの残り半分に過ぎない。現在のペースならあと40年。
政治的には、この1兆トンアプローチを取ると政策決定者が「1兆トンになる前に止めればいいじゃないか」といって行動しなくなるリスクが生じる。だがAllenらはこのアプローチならば排出にはハードなリミットが存在し、行動が遅れればより過激な行動が必要になることが強調出来ると主張。

5. 注文に応える気候学
排出が増え続けるため、各国政府は科学者たちにローカルなレベルでの気候変動について確度の高い情報を求めるようになった。英国政府の要望に応え科学者たちは7月、気候変動が英国に及ぼす影響について25kmメッシュで予測。
この予測は本来は2008年11月に発行予定だったが、最後になって方法論について第三者レビューを行ったために遅れた。第三者レビューは、この予測には重要な制限があることを利用者に対し明確にする必要があると結論づけた。またこのレビューを見て、これは現在の気候学の能力を無理に押し広げていると案じた人もいた。
この予測は「climate services(気候サービス)」と呼ばれる新たな試みの一つである。これはエンドユーザにカスタマイズされた気候変動の情報を提供しようとするもので、従来以上に細かいスケールでの予測も含んでいる。ある特定の地域で干ばつが増えるとか、洪水が悪化するとか、嵐が増えるとかに備える一助になる。
この英国の野心的試みに対する懸念にも関わらず、世界各国の政府は英国に追従し、また英国の失敗から学ぼうとした。7月にはドイツが最初の気候サービスセンターをハンブルグに開設。米国も国立気候サービスを始めるつもりと表明。9月にはWMOがジュネーブで会合を開き、気候サービスに関するグローバルフレームワークを制定して国家間で気候データを交換できるようにした。

6. オーバーシュートと適応
炭素の排出が増え続け、政治がぐずぐずし続けているため、一部の科学者はもし気温上昇を2℃に留めるのに失敗したら世界はどうなるかを考え始めた。
4月、Martin ParryらはNatureで、2℃を超えるオーバーシュートへの適応を準備すべきと主張 (458, 1102; 2009)。たとえ2015年に排出がピークとなりその後年率3%で減ろうとも、2℃を超える可能性は半分あるのだ。予防措置として、我々は4℃への適応計画を始めるべきだ。
このメッセージは9月のOxfordでの会議で繰り返された。この会議までに科学者たちは研究を大きく進めていたが、特記すべきは、4℃上昇したらGDPは1兆ドル損なわれ、1億4600万人が(海面が1m上昇すれば)移住を強いられること。飢饉や疫病や山火事、洪水と共にである。そしてRichard Bettsは2060年までに4℃上昇しうると発表。こうなる原因の一部は天然の炭素吸収源がその能力を失う可能性がなくもないため。
11月、欧州の65の研究所のコンソーシアムが、2℃以上にオーバーシュートしないためには2100年までに排出は事実上ゼロにする必要がある、2050年からは炭素を大気から除去し始める必要があるかもと結論。

7. ジオエンジニアリング、足場を得る
ジオエンジニアリングは今年SFから現実へと数歩あゆんだ。我々は気候を制御すべきという考えはこれまで空想的だ、危険そのものではないと言うなら、と思われていた。しかし排出量が増え続けるため、この考えはおまけ扱いを少しずつ脱しつつある。
1月、硫化鉄を南洋に散布するドイツとインドの科学者らの実験が一時的に差し止められた。プランクトンの大発生を起こす研究はジオエンジニアリングの実行可能性を示すことになるという恐れによる立ち往生である (Nature Rep. Clim. Change doi:10.1038/climate.2009.135; 2009参照)。最後はドイツの大臣から承認を受けることで研究者たちは実験を完了させることが出来た。
8月には英国王立協会が、ジオエンジニアリングは遠からず、排出がカットされない中で気温上昇を抑制する最後の希望になるかもしれないとのレポートを発行。米国では公聴会が開かれ、National Academy of Sciencesはワークショップを開催。「どこかで我々は岐路に立ち、こうしたガスを大気から除去し始めなければならないかもしれない」とIPCCのRajendra Pachauri議長はコペンハーゲン会議に先立ってLondon Timesに。
大多数の人間はジオエンジニアリングを最後の、気乗りがしない手段と見なしているが、Steven LevittとStephen J. Dubnerは著書SuperFreakonomicsでこれは気候問題に対する早い安い解決策だと熱烈に擁護。単にエアロゾルを大気に注入するだけで地球を冷やすことができる、という彼らの提案は騒ぎを引き起こした。Raymond T. Pierrehumbertは公開書簡で(以下不毛なので割愛)。

8. エアロゾルによる冷却効果に異議
人為起源のエアロゾルは太陽放射を反射し、また雲の寿命を延ばすことで温暖化を妨げると考えられてきた。だが10月に発表されたレビュー (Nature 461, 607; 2009) では、作られる雲のタイプや地域によって効果は異なり雲の寿命を縮める場合もある、たぶん効果は最低限だが更なる研究が必要とされた。
10月に発表された別の論文 (Science 326, 716; 2009) ではDrew Shindellらが温度に関するエアロゾルの効果は他の大気中のガスとの相互作用に依存すると報告。100年を超える時間スケールでは、エアロゾルとの相互作用がメタンの温室効果を10%増加させる、そしてエアロゾルと雲との相互作用も含めれば、メタンによる温室効果は20-40%増加する。これらの相互作用による温暖化の加速は、窒素酸化物と硫化物エアロゾルとの相互作用による冷却効果で打ち消される。これら大気中の微粒子に対する全てを総合した判決はまだ出ていない。

9. ヒマラヤの氷河を巡る大騒ぎ
11月、インドの環境森林省が、ヒマラヤの氷河は温暖化でも溶けていないと主張する引退した氷河学者が書いたレポートを発行。数名の学者が、これは査読も受けておらず、たった25の氷河に基づいて書かれたものだと怒りの反論。Guardian誌のインタビューに対し、これは根拠がないとRajendra Pachauri IPCC議長。だって2007年のIPCC報告書はヒマラヤの15000の氷河は世界のどの氷河よりも早く溶けており、2035年までに完全に溶けないとも言えないと言ってるからね。Syed Iqbal Hasnainはthe Hinduに対して、あれは古いデータを使っているし、実際には氷河は急速にやせ細っていると述べる。
だがKenneth HewittはBBCに語る。ヒマラヤのいくつかの氷河は本当に前進している。氷河の変化は場所や高度によって異なるようだ。一般論を語るにはデータが足りない。気候変動はここヒマラヤでも起きている、だが異なる結果をもたらしている。

10. 気候ゲート、さらなる混乱をもたらす
(科学者の振るまいが分かるまとめ方で、ああなるほど、ありそうな話だと思いましたが科学のfactではないので無視)

Nature Reports Climate Change
Published online: 17 December 2009 | doi:10.1038/climate.2010.134

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