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zoom RSS ジオエンジニアリングの限界

<<   作成日時 : 2009/03/02 05:36   >>

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The Economistの記事をベースに、原論文のアブストラクトの情報を加えつつ。
もし人間が地球を暖めることが出来るなら、冷やすことだって出来ていい筈だ。これがジオエンジニアリングの背景にある考えかたであり、太陽光を反射する粒子を成層圏に撒くことから、太陽光を遮る宇宙パラソルまであらゆるアイディアが提案され、温暖化対策が進まないことに苛立つ人々の密かな心のなぐさめとなっている。
今週発表された2件の論文によれば、こうした希望は誤りかもしれない。
Raymond Pollardをトップとして英国国立海洋センターの研究者らによって書かれた第一の論文(Nature掲載)では、海に鉄を投入しプランクトン(藻類)を繁殖させるというアイディアを検証した。プランクトンが吸収したCO2の大部分はプランクトンが死んだとき大気に戻るが、8〜9%は深海に沈む。Pollandらは天然のFe添加実験場であるCrozet諸島周囲の海流を観測した。Crozet諸島からは鉄が溶けて海流により北に運ばれており、日が長くなるとアイルランドに匹敵する広さでプランクトンが大発生する。観測したところ、確かに鉄が運ばれる北部のプランクトン発生は確かにより大きくより持続した。余剰の鉄分により成長率、CO2吸収率は共に2〜3倍となり、また深さ3kmでのカーボンフラックスを測定したところ深海へと運ばれるCO2も同程度に増加することが確認された。だが鉄分あたりの増加量は、ジオエンジニアリングで見積もられてきた量の1/15〜1/50に過ぎない。

第二の論文はThe University of East AngliaのTim Lentonとthe Tyndall Centre for Climate Change ResearchのNaomi Vaughanが書きAtmospheric Chemistry and Physics Discussionsに掲載されたもの。各種のジオエンジニアリングのランク付けを試みた。
Lentonらはまずはコストや実用性を無視し、その冷却効率(ここでは放射強制力に対する潜在的影響力)をシンプルかつ解析的に分析した。従ってこれは最終的な評価ではない。ベストはsolar shade (なんて訳すんだろう? 個人的には宇宙日傘とか訳したいところだが)。太陽光を遮る巨大な宇宙の傘である。これは最も効率的かつスケーラブル (要求量に応じてシステム規模を変更できること)である。地球が暑くなったらより大きな or より不透明な傘にすればよいだけなので。
他のアイディアはスケールアップする上で本質的な制限がある。例えば硫酸塩の粒子を成層圏に散布する場合、散布量を増やしても太陽光線の反射量が飽和してしまう。もしCO2排出を無制限に続けるならば、硫酸塩では最大でも今後100年間の気温上昇の半分しか相殺できない。
他の方法は更に効果が薄い。海水を空中に散布し雲を生成する方法は成層圏に硫酸塩の粒子を散布するのとおおよそ同程度の効果がある。だがこの方法は全球に効果が及ぶわけではない。また海に鉄などの栄養塩を散布する方法は、硫酸塩や海水を散布する方法の1/6程度の効果しかない。
しかも、効果の大小はランク付けの方法の一つに過ぎない。理論上はsolar shadeはいかなる冷却でも可能だが、CO2排出を無制限に続けた場合の今後100年間の気温上昇の半分を相殺するには、410万平方キロ (ブラジルの半分) の大きさが必要である。硫酸塩は、大気中での寿命が数年間しかなく、効果を保つためには数世紀にわたって補充しつづけなければならない。これは大抵の国家の寿命より長い。
そして副作用がある。ジオエンジニアリングはどれも巨大であり、生態系を破壊する。植林は食料生産と競合する。海に栄養塩を散布すれば赤潮や青潮となる危険がある。環境保護運動家がお気に召すとは思えない。実際、海の富栄養化について更なる実験を希望した研究者たちはドイツ政府から差し止められた。海洋生物の保護を定めた国際条約に違反すると危惧されたためである。環境保護に完全な解はない。
2番目の論文は、abstractを見た限りでは「希望が持てる」的な書き方になっているし、内容も上記the Economistのまとめとはかなり違うのが気になりますが、他人が要約すると全然違うまとめ方になるのはよくある話です (日常生活でも、あいつ、結局なにが言いたいんだ?と聞かれた第三者が本人と全然違うまとめ方をするのは珍しいことじゃないですよね。特に本人が苦しい言い訳をしている場合)、本文を確認する元気もないし、とりあえずはthe Economistのまとめは外していないと思っておきます。必要な方は下記journal referenceからどうぞ。

そうか、鉄は意外と効果無いのか。ううむ、本当だろうか。私は畠山重篤「鉄が地球温暖化を防ぐ」を読んで、現場の漁師さんが「効果がある」というなら確かだろうと思っていたんですが、、、上記は「効果はある、だがジオエンジニアリングの連中が言うほどではない」であり、決して矛盾はしていませんが。

'Every silver lining has a cloud,' The Economist print edition, Jan 29th 2009, from http://www.economist.com/science/displaystory.cfm?story_id=13013035

Raymond T. Pollard, et.al., 'Southern Ocean deep-water carbon export enhanced by natural iron fertilization,' Nature 457, 577-580 (29 January 2009) | doi:10.1038/nature07716; Received 23 October 2008; Accepted 8 December 2008, from http://www.nature.com/nature/journal/v457/n7229/abs/nature07716.html

Journal reference: Lenton, T. M. and Vaughan, N. E.: The radiative forcing potential of different climate geoengineering options, Atmos. Chem. Phys. Discuss., 9, 2559-2608, 2009, from www.atmos-chem-phys-discuss.net/9/2559/2009/

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