気候変動覚え書き

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zoom RSS 炭素は永遠である理由

<<   作成日時 : 2009/02/07 08:35   >>

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CO2レベルが上昇して気温が上昇すると、気温は少なくとも500年間、粗い計算によれば1万年以上、元には戻らないという話は私には非常に不思議であり、そう考える理由が知りたいと思いました。ちょうどいい論文が公開されていたので原論文を読んでみました(本当は、この論文が目に付いたので先の記事をまとめる気になった)。
人間のCO2排出による温暖化、干ばつ、海水の膨張は本質的に不可逆であり排出を止めても1000年間は逆転しない。
排出されたCO2の多くは海に吸収されるが、一部が大気中に留まり温室効果が続くことは古くから知られていた。そこでCO2排出が現状の385 parts per million by volume (ppmv)からある濃度(450ppmv〜1200ppmv)まで年率2%で増加し、そこで突然CO2排出が停止したと仮定した(450ppmvから1200ppmvまで、ピークの濃度に達するまでの時間は各々異なるが、1000年間という長期予測の中では違いは無視できる、という判断らしい)。CO2のうち約80%は海水との相互作用で吸収され、約20%が大気中に残る。数千年レベルで起きるCO2除去過程はここでは考えない。その結果として起きるであろう各種事象のうち、応答の物理過程がよく理解されており、既に起き始めており、モデルによるばらつきが小さい気温、降水量、および海水の熱膨張をAD3000まで計算した。
まずCO2濃度は、20%が残るという話と一見矛盾するが、1000年後でもピーク時の約40%が大気中に残る。放出されたCO2のうち約50%、つまり半分、は即座に海洋に吸収され、大気中のCO2濃度上昇には寄与しない。寄与するのは残りの50%。つまり、大気中の濃度が仮に100ppmv増えたとすると、実は人間は既に200ppmv分排出している。即座には吸収されなかった50%から更に数百年かけて海洋に30%が吸収され、最終的に残るのは全体の約20%である。これを大気中の濃度がどれだけ減るかで見ると、ピークの20/50=0.4=40%が長期的に残ることになる。
次に気温は、排出を止めたのち大気の温度は少なくとも1000年間にわたり大きくは低下しない。最大でも0.5度未満。CO2が減少するため放射強制力は減少するが、海洋からの熱により相殺される。相殺されるのは、この2つはどちらも深海での混合に支配されるプロセスであるため。
降水と海水の熱膨張であるが、もしCO2が600ppmvとなったところで排出を停止するならば、地中海と西オーストラリアの降水量は13%〜16%減少し、数世紀間続く。これは1930年代米国のダストボールの干ばつよりも激しい。海水の熱膨張は0.4m〜1mとなる。もしCO2濃度が1000ppmv超で停止するならば、熱膨張は0.6m〜1.9mとなる。
ここでは多くの事象を考察対象から外している。氷床の融解などは重要な事象であるが、これらは十分に理解されている訳ではないため本計算には含めていない。またジオエンジニアリングによりこれらは緩和出来る可能性があるが、本計算には含んでいない。
この温暖化の不可逆性を考えると、対策を考えるにあたり将来価値は現在価値よりも割引くという手法には問題がある。また100年間の地球温暖化係数 (global warming potentials, GWPs)を用いた排出権取引はCO2のこのユニークな特性を無視しており問題がある。
この論文、脱線した(と本人は思っていないんだろう)無駄な記述が多いのが気になりますが、それはともかく。

長期変化を支配する法則を理解するため、インパクト応答的な単純なモデルを設定して解析した訳ですね。リアリスティックな予測は最初から目指していない、と論文中にあります。了解。

大気の温度が下がらない事については「どちらも深海での混合に支配されるプロセスだから」というシンプルな説明(正直、意味がわからない。知識がないということは悲しいなあ)に加え、図を使って色々と説明されています。以下は私の理解です。正しく理解できていればよいのですが。

この分野には'realized warming fraction'というStouffer RJ(2004)ほかで使われている概念がある。これは、あるCO2濃度がずっと続いたときに海洋と大気が熱平衡状態となる温度を考え、過渡状態にあるその時点の温度変化が、平衡状態で実現されるべき温度変化のうち何パーセントを実現しているか、を表す概念。CO2が年率2%で増加しているとき、realized warming fractionは50〜60%, つまり起きるべき温度上昇のうち50〜60%しか実際には起きていない。これは他のモデルでも確認されている。CO2排出が止まりCO2が減少し始めると、熱平衡となる気温 = 起きるべき温度変化 = Realized warming fractionの分母、は小さくなる。CO2は最終的にはピーク比で40%まで減少するので、実現されるべき温度変化、もピーク比で言えば40%と大きくは違わない値となる。その時点で実際の気温(realized warming fractionの分子)はというと、50〜60%、つまり40%よりも少し大きい。従って、熱平衡を達成する(realized warming function=100%となる)ためには、気温が少しだけ低下すればよく、そこで安定する。

論文ではこの後、各地域の降水量の変化、その求め方などを細かく論じていますが、ここでの私の興味の対象ではないので割愛。気温がこれだけ高め安定すれば、そりゃ、色々起きるだろうさ。

この論文の主張をまとめると、CO2濃度はかなり高い値で安定する。従って、そのCO2濃度に見合った気温は高く、CO2排出を停止した時の気温から大きく下がることなく熱平衡状態に達する ---でしょうか。

主張はなんとなく分かった気になりました。うーん、そういう仕掛けか、、、CO2は系に留まり続けており、バランスは回復しないということか。本当だとしたら嫌だなぁ。

Journal reference: Susan Solomon, Gian-Kasper Plattner, Reto Knutti, and Pierre Friedlingstein, 'Irreversible climate change due to carbon dioxide emissions,' in Proc. Natl Acad. Sci. USA (PNAS), vol.106, no.6, pp.1704-1709, 2009, doi:10.1073/pnas.0812721106, can be retrieved from http://www.pnas.org/content/early/2009/01/28/0812721106.full.pdf+html

この論文は色々なニュースメディアに取り上げられていますが、いつもお世話になっているScienceDailyとNature Newsだけ取り上げておきます。

NOAA/Earth Systems Research Laboratory (2009, January 28). Climate Change Largely Irreversible For Next 1,000 Years, NOAA Reports. ScienceDaily. Retrieved January 28, 2009, from http://www.sciencedaily.com/releases/2009/01/090127163403.htm

Anna Barnett, 'No going back,' Nature Reports Climate Change, 5 February 2009, doi:10.1038/climate.2009.13, from http://www.nature.com/climate/2009/0903/full/climate.2009.13.html

2009/02/07: タイトル変更

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