気候変動覚え書き

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zoom RSS 炭素よ永遠なれ

<<   作成日時 : 2009/02/01 13:14   >>

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化石燃料由来のCO2は結局は海に取り込まれてしまうから、排出を止めれば遠からず温暖化と気温は(大雑把には)元に戻る、と私は思っていました。が、そうではないとの意見が最近増えてきて、ホットな話題となりつつあるようです。Nature reports, climate changeの2008年12月号にサイエンスライターMason Inman氏による短い記事があったのでまとめておきます。
温暖化ガスとしてのCO2の寿命は、数百年と考えられてきた。だが一部の科学者たちは、それよりも遥かに長いと考え始めた。これは恐らく、温暖化問題のなかで理解が最も不足している事柄であり、IPCC報告書の記述は十分ではないし毎回変更されている。
CO2は他の人為的温暖化ガスと異なり、様々なプロセスを通じて除去され、各々の速度は異なるため一つの数字で示すことが難しい。主要プロセスは下記。
  • 海洋への吸収: 数百年以内。最初は表層水に吸収され、最終的には深海へと運ばれる。海洋は巨大ではあるが表層水により吸収されるのは一部であり、海流により深層水が表層まで運ばれないと更なる吸収は出来ない。また海洋に吸収されたCO2の多くは海から再び大気中に放出され、大気中のCO2濃度を百万年単位で上昇させる。
  • 海底堆積物中のチョーク(炭酸カルシウム?)と反応: 数千年。だが近年の研究によれば、このプロセスでCO2が産業革命以前のレベルに戻ることはない。
  • 岩石の風化: 数十万年。CO2が水に溶けて弱酸となり、岩石を風化させ、炭酸マグネシウムを生成する。産業革命以前のレベルに戻すことが出来るが、数十万年かかる。
それぞれのプロセスで除去されるCO2の割合は、CO2の絶対量にも依存する (元記事の中でも記述はばらつく ---をいをい) が、ざっと第一のプロセスで50%、第2のプロセスで30%、残りが第3のプロセスとなる。1000年後でも1/3は大気中に留まる。1000年とは実務的には永遠と見なせる時間である。文明は興きて亡び、グリーンランドと西南極氷床は大きく溶け、海面は上昇し、海岸線は変わる。
CO2由来の温暖化も同様に事実上半永久的に続く。Carnegie Institution for Science in StanfordのKen CaldeiraとConcordia University in MontrealのDamon Matthewsの研究によれば、我々がどれだけの化石燃料を燃やすかにかかわらず、我々がCO2排出を止めると気温は2,30年は上昇し、そこに留まる。Caldeiraらの場合、シミュレーションは500年間であったが、Potsdam Institute for Climate Impact ResearchのArcher and Victor Brovkinらははるかに簡略化されたモデルをはるかに長期に走らせ、ほぼ同様の結果を得た。それによれば気温は速やかに高原状態となり、12000年間で1度しか低下しない。
これは既にミランコビッチサイクルによる氷期の到来を乱している可能性がある。現在のCO2レベルでも5万年以内には次の氷期が始まるだろう、だがもし全ての化石燃料を燃やしたならば、50万年以上にわたって氷期は起きないかもしれないとのこと。
「恐らくは温暖化問題のなかで理解が最も不足している事柄」などと言われると、本当か?他にも「分かっていないことすら分かっていない」事柄がまだまだあるんじゃないの?と突っ込みたくなりますが、それはともかく。疑問が山のように。

まず、気温が上昇したあと、そこで一定となる理由が分かりません。CO2は人間が排出を止めれば海洋に多くが吸収されるはず。100%ではないにしても。であれば、CO2のレベルが低下した後、高くなった気温を維持するメカニズムは何か?なお、CO2以外の温暖化効果ガスの多くはCO2より寿命が短かったはず。人間が放出を止めれば大半は消える筈です。

次に「産業革命以前のレベルに戻ること」が天下り的に「正しい状態への復帰」と見なしているようです。それは良しとしましょう。でも、産業革命以前のレベル、と言ったって、数十万年レベルで見れば280ppmでビシッと安定していた訳ではないのでありまして。Azollaイベントなんて話も聞くし。どんな状態となることを「人間が手が加わる前の状態」と見なしているのか?(炭素循環に関して私に常識がないだけ?)

あと、各々のプロセスで吸収されるCO2の量と時間経過がこの短い記事の中ではクリヤには述べられていなかったのでフラストレーションが溜まりました。断片的な数字はいくつか出てるし、図まで添えてあるんだけど、それらが各々、異なる視点からの数字なので結局なにがどうなるのか明確じゃないのよね。これは書き手の力量だけの問題ではなく、まだ学術的なコンセンサスが出来ていないのだろうし、CO2の絶対量でも変わるようだから、単純明快には書けないのだろうけど。

なお、まだ不十分とされているIPCCの最新の報告書 (AR4) のCO2の記述 (気象庁訳のTS) を見ると

> 二酸化炭素は特定の寿命を持たない。それは二酸化炭素が大気と海洋と陸上生
> 物圏の間を連続的に循環し、その大気からの正味除去には、それぞれ時間スケ
> ールの異なるさまざまな過程が関与しているからである。

> この報告書で使われている二酸化炭素応答関数は、この報告書の第10 章で使わ
> れているベルン炭素循環モデル(Bern2.5CC; Joos et al. 2001)の改定版に基
> づくものであり、背景二酸化炭素濃度値を378ppm としている。時間tにおける
> 二酸化炭素のパルスの減衰は、
> $$a_{0} + \sum^{3}_{i=1} a_{i} \dot \exp^{-t/\tau_i}$$
> で与えられる。ここで、t<1,000年に対して、a0 = 0.217、a1=0.259、a2=0.338、
> a3=0.186、τ1=172.9 年、τ2 = 18.51 年、τ3 = 1.186 年である。

つまり、1000年未満の応答を見積もる上では時定数172.9年、18.51年、1.186年の3つのプロセスが重要である。時定数が短い第2,第3のプロセスのため0.338+0.186=52.4%のCO2は数十年で除去される。時定数172.9年のプロセスが数百年かけて25.9%を除去する。当初量の21.7%はいつまでも残る、と言っていますね。ふむ。

2009/02/07 本記事のソースを記述し忘れていたので追記
Mason Inman, 'Carbon is forever,' nature reports climate change, VOL 2, DECEMBER 2008, from http://www.nature.com/climate/2008/0812/pdf/climate.pdf

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