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zoom RSS 米国政府によるAbrupt Climate Change(気候の突然の変化)の評価

<<   作成日時 : 2009/01/07 07:15   >>

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CCSP (U.S. Climate Change Science Program) がabrupt climate changeの可能性について評価した500ページ弱のレポートを発行したようです。私はこのprogramをよく知らないのですが、IPCCと類似のシステムに見えます(CCSPを参考にIPCCを作ったのかな?)。
Abrupt Climate Change(気候の突然の変化) とは「大規模な変化が2,30年かより短い期間で起き、数十年以上続き(or続くと見込まれ)、人間界と自然界に破壊的な影響をもたらすもの」だそうです。ヤンガードリアスみたいな現象を想定しているんですね。そして海面上昇、降雨、大西洋の子午面循環(熱塩循環)、メタン、の4つについてAbrupt Changeが起きるかを議論します。Exective summaryの中で「主要な結論」とされている部分は

グリーンランドや西南極の氷床の周辺部は近年急速に変化しており、氷河の流れや厚みの減少が加速している。2倍以上の速度となった氷河もある。これは表面で溶けた水が基岩まで浸透して氷河の動きが滑らかになったり、氷棚が失われたり、氷河の先端が後退したり、基岩に張り付いていた氷河が剥がれて氷河の流れへの抵抗が減ることと関係している。現行世代のモデルはこうしたプロセスを取り入れていない。これが短期的な天然の調節なのか、近年の気候変動に対する応答なのかは不明である。だがこうした現象は温暖化が引き金となっているため、温暖化が進めばより頻繁に起きる可能性が非常に高い(very likely)。氷の体積が将来急速に変化する可能性が高い(likely)地域は南極西氷床やグリーンランドの大きな氷河(例えばJakobshavn Isbrae)など、氷が水面よりも十分に深い場所で地面と接触している、氷河が海に流れ込み深い海峡を通って離島まで行く場所である。こうしたプロセスをモデルに取り入れると、21世紀末までの海面上昇は0.28±0.10m〜0.42±0.16mとしたIPCC AR4の予測を大きく上回る可能性が高い(likely)。
現在のところ、人為的気候変動が北米の降水量に影響しているという明確な証拠はない。しかしIPCC AR4以来、北米と亜熱帯での水文と気象の将来の変化について気候モデルシナリオの解析が進んだ。温暖化により亜熱帯はより乾燥し、それが持続する可能性が高い(likely)。この乾燥化は米国の南西部へと広がり、深刻かつ持続的な干ばつを引き起こす可能性を高める。もしこれらモデルの結果が正しいならば、この乾燥化は既に始まっているのかもしれない。だが北米の南西部では水文と気象の自然変動が大きいため、現時点では明確に識別できていない。
北大西洋の子午面循環(Atlantic Meridional Overturning Circulation; AMOC)は21世紀には温暖化ガス増加への応答として速度低下する可能性が高い。現在の最良の見積もりは25-30%の速度低下である。しかし21世紀中に、AMOCが突然弱まったり停止したりする可能性は非常に低い(very unlikely)。22世紀以降に停止する可能性も低い(unlikely)が可能性は排除出来ない。
メタンが突如劇的に大気へと放出される可能性は非常に低い(very unlikely)が、メタンハイドレートや湿地からコンスタントに放出される速度が増す可能性は非常に高い (very likely)。現在のモデルによれば、北半球の高緯度地方でメタン放出が倍になるのは簡単である。しかしこれらのモデルは北半球の高緯度地方でのメタン放出に関わるプロセス全ては含んでいないため、はるかに大幅に(あるいは小幅に)増加する可能性はある。ハイドレートからの放出が加速する可能性は高い(likely)が、その大きさを評価するのは困難である。


その他、exective summaryの中から興味深い記述を拾うと
    海面上昇
  • 最終氷期終了後(約2万年前)、海面は10〜20mm/yearで上昇し、それが数世紀続いた。
  • グリーンランド氷床が質量を失っている可能性は極めて高く(extremely likely)、それが加速したのは90年代半ばである可能性は非常に高い (very likely)。高地では温暖化により降雪量が増加し、氷の質量が増加しているが、周辺部で氷河が加速し氷が薄くなることで帳消しとなっている。90年代初めは質量損失はほぼゼロだったが、100Gt(ギガトン)/yearとなり、最新の観測(2006年)では200Gt/year超であった。
  • 南極氷床の質量損失はは90年代半ばで80Gt/year。2000年代半ばで130Gt/year。高地の質量は増えているが、西氷床と南極半島が質量を失っている。小さな氷河と氷冠の質量損失は380〜400Gt/yearで、19世紀からの典型的な値の少なくとも3倍。
  • 氷河から張り出している氷棚が崩壊すると氷河は加速する。従って海の温暖化により氷棚が崩壊、はabrupt changeの最有力候補の一つ。Jakobshavn Isbraeのように深い海峡を通過している氷河も同様に候補。

    陸上の水文(干ばつ)
  • 干ばつは影響が大きい。数年間の厳しい干ばつはabrupt changeと見なされがち。たとえそれが気候系の永続的な変化ではなくても。
  • 北米および世界の干ばつは、熱帯地方のSea Surface Temperature (SST)との関係が深い。米国南西部およびメキシコ北部の干ばつはラニーニャと特に関係が深い。1930年代のダストボールと1950年代の干ばつは北大西洋のSSTが高かったことと関係している。インド洋から太平洋にかけてのSSTが高いことが近年の干ばつとは関係している。
  • A.D.900〜1600の北米の大干ばつは太平洋の熱帯地方のSSTが低く、北大西洋の亜熱帯域のSSTが高く、太陽放射が高く火山が活発ではなかったことで起きた可能性がある。だがこれは暫定的な結論であり、これほど長期にわたった理由は十分には説明出来ていないし他の海域が関係していたかも分かっていない。
  • 過去1万年には更に振幅が大きく永続性も高い変動があったという古気候学上の広範な証拠がある。変動の幅は大きいし、水文と気候について本当にabrupt changeがあったことを示している。

    大西洋の子午面循環(熱塩循環)
  • AMOCが次第に弱くなっても、欧州のほぼ全ての地域と北米では温暖化する。温暖化ガス増加の効果である。
  • AMOCが停止する可能性は非常に低い(very unlikely, 10%未満)が、起きた場合の影響は甚大である。熱帯降雨帯 (tropical rainfall belt。ITCZのこと?)の南への移動、北大西洋での追加的な海面上昇、海洋生態系の破綻などが考えられる。

    メタン
  • 海底と永久凍土のメタンハイドレートの量はよく分かっていない。推定には恐らく10倍程度の誤差がある。この不確実性があるため、リスクを見積もることが難しい。
  • メタン放出の劇増は観測されていない。その可能性を指摘する文献は多数あるが、モデリング、およびアイスコア内のメタンの同位体分析によれば、10万年以内にそうした現象は起きていない。5500万年前のPETMで大規模に放出されたという仮説に対しては多くの異議が出ているが、否定されてはいない。

米国、そしてブッシュ政権は地球温暖化についてこの数年間、それはそれはボロクソに言われてきたし、実際、言われるだけのことをしてきたと思いますが、その一方でこんな文書も作っているんですよね。米国の底力を感じます。

CCSP, 2008: Abrupt Climate Change. A report by the U.S. Climate Change Science Program and the Subcommittee on Global Change Research [Clark, P.U., A.J. Weaver (coordinating lead authors), E. Brook, E.R. Cook, T.L. Delworth, and K. Steffen (chapter lead authors)]. U.S. Geological Survey, Reston, VA, 459 pp.

報告書のダウンロード先
http://www.climatescience.gov/Library/sap/sap3-4/final-report/default.htm
CCSP自身による一般人向け要約
http://downloads.climatescience.gov/sap/sap3-4/sap3-4-brochure.pdf

上記の報道記事
The Earth Institute at Columbia University, 'Abrupt climate shifts may move faster than thought,' December 22, 2008, retrieved from http://www.enn.com/top_stories/article/38913

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