気候変動覚え書き

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zoom RSS 我々が2008年に学んだこと (Nature Geoscience)

<<   作成日時 : 2008/12/27 19:20   >>

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Nature Geoscienceに12/18付で今年の気候変動関連の研究成果が'What we've been learned in 2008' として総括されています。Amanda Leigh Mascarelliというサイエンスライターさんによるまとめです。なんか論理が甘いし、無駄な小話に字数を使いすぎているしで気に入らないんですが、あまり細かいこと言っても生産的じゃないし。

以下は別に正確な翻訳を目指したものではないし、私の英語力不足に起因する誤訳は間違いなく沢山あります。ご免なさい。

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我々が2008年に学んだこと

1. 他の温暖化ガスも懸念すべき
CO2以外の温暖化ガスも重要だと科学者は気づいてはいたが、CO2は身近だし大気中で長寿命であるため、科学者も一般社会も注意の大半をCO2に向けてきた。だが今年発表された研究によれば、赤外放射をトラップする他のガスにも心配すべき理由がある。The University of CaliforniaのMichael Pratherに率いられた科学者たちは7月、三フッ化窒素 (nitrogen trifluoride) というmp3プレーヤーやフラットパネルTVの製造に使われるガスは従来見積もりよりも遙かに大きい影響を及ぼすようになるかもと問題提起。使用量が激増していることが主な理由 (Geophys. Res. Lett. 35, L12810; 2008). この仮説は10月にスクリプスのRay Weissたちが、このガスの大気中の濃度がこの30年間で20倍になっていることを発見したことで裏付けられた (Geophys. Res. Lett. 35, L20821; 2008)。また今年、複数の独立した研究グループがメタン放出が急増していると報告 (Geophys. Res. Lett. 35, L22805; 2008 and Nature 456, 628-630; 2008)。メタンはCO2の20倍の温暖化効果がある。正確なメタン放出源は分かっていない。

2. 北極海の夏の海氷は急速に減少中
北極海の海氷面積はこの夏、記録破りの小ささだった2007年から少し回復した。しかし、2008年の夏の極小はそれでも、海氷の人工衛星観測データが利用可能となった1979年からの記録の中で2番目の小ささであった (National Snow and Ice Data Center 16 September 2008; http://nsidc.com/arcticseaicenews/2008/091608.html)。IPCCは2007年、現在のCO2排出レベルならば、夏の海氷は2040年から2100年超のどこかで完全に消滅しうると予測した。だがこの2回の夏で氷が大幅に失われたことを考えると、夏の北極海から氷がなくなるのは予測よりもずっと早いかもしれないと科学者たちは思い始めている。10月には冬の氷の厚さが2007年の最小ののち急減しているとの報告があり、氷は面積のみならず総量でも減少していることが示された (Geophys. Res. Lett. 35, L22502; 2008)。薄い氷は溶けやすく、また氷が溶けて生じる黒い開水面はより太陽光を吸収し氷を溶かすというフィードバック効果を生じるため憂慮される。北極の夏の海氷が失われることの影響は北極地方に留まらず全地球的な影響を及ぼす。そしてこれは気候システムを「キック」し、自然変動によってすらドライブされ、急速な、暴走する温室効果を生む「変曲点」候補の一つと考えられている。

3. 温暖化の影響は既に出始めている
生物系と物理系に対する人為的温暖化の効果、例えば種の移動や季節変化のパターン、が今年明確となった。国際チームが30000種の生物と物理現象、例えば花粉の放出や鳥の営巣、氷の溶解のトレンド、について大々的な調査を行った。これまで言われていた世界各地の変化を研究者たちは史上初めて人為的温暖化のためだとした (Nature 453, 353-357; 2008)。生物や生態系はそうした変化を乗り切れないかも、という懸念に駆られ、保護論者 (conservationist) たちは生物たちを適応のため再配置することを真剣に検討し始めた (Science 321, 345-346; 2008)。また氷に覆われた生息地が失われつつあるため、ホッキョクグマが気候変動により生存を脅かされている初の種として絶滅の危機に瀕する種の保存に関する法律 (Endangered Species Act) に基づくリストに掲載され、環境保護運動家による長い法廷闘争が続くこととなった。

4. ホッケースティックは高く掲げられたまま
1998年の悪名高き「ホッケースティック」曲線の追跡調査で、この20年間は近年で最も高温であることが確認された。気候学者Michael Mannのグラフは嵐を呼び、温暖化の証拠を巡る激しい論争の象徴となり、米国国会議員Joe Bartonの要請により研究に対して独立した調査が行われるに至った。Bartonの諮問による2006年のレポートは、過去1000年間の気温を再構成するに際してMannらはイガゴヨウ (bristlecone pines) の年輪データで北半球を代表させたと非難。彼らの先駆的研究は(既に他の研究によって)大部分が裏付けられていたが、この9月にMannらのおなじチームは過去2000年間の全球の気温をより多くのデータ、海底堆積物や氷のコアや珊瑚や古文書を用いて改訂した (Proc. Natl Acad. Sci. USA 105, 13252-13257; 2008)。彼らは年輪データを含めて・含めずに全球の気温を再構成。年輪データを含めない場合でも近年の温暖化は過去1300年間のいかなる時点よりも大きいこと、年輪を含めれば、少なくとも過去1700年間について同様のことが言えることを示した。クリスチャンサイエンスモニターによれば「今もやはり使い込まれ、だがリンクに飛び出す準備万端の1998年のホッケースティックに見える。柄のリーチはいまや更に過去に伸び、更に嫌な話となっている。だが先端部のブレードは同じことを言っているのだ」

5. 懐疑派はまだいる
科学界ではほぼ全員が合意しているにもかかわらず、懐疑派は今年も変わらず温暖化は茶番だという主張に固執。米国共和党は、気候変動における人間の寄与を部分的ながら公式に認めたが、アラスカ州知事セイラ・ペイリンはジョン・マケインの副大統領候補としての選挙運動期間中も納得せず「私は温暖化は人為的なものではないとの立場だ」と主張。直近ではウェブサイトPoliticoの2つの記事に対し気候ブロガーたちが武器を手に立ち上っている。ある者は温暖化の背後にある科学に疑いを差し挟み、ある者は極端な寒さもあり得るとゴアも言っていると示唆。気候変動は重大な問題なのか、米国世論が未だに定まらないのも無理はない。

我々が未だ努力し続けていること

1. 何時までにどれだけ温暖化するのか
気温とSSTが22世紀まで上昇傾向を示すだろうことは広く合意されているが、しばらく先までにどれだけ変化するか、たったそれだけの事に我々はあまり確信が持てずにいる。最初期の研究の一つは、この先10年間はそれほど急速には温暖化しないかもと結論づけている (Nature 453, 84-88; 2008)。The Leibniz Institute of Marine SciencesのNoel Keenlysideとその同僚たちは、10年単位のタイムスケールを持つ海洋循環の変化のため、海洋の一部において2005-2015年では表面水温は2000-2010年ほど上昇しないかもしれず、一部では僅かに低下するかもしれないことを見いだした。これは温暖化は起きていない、ではなく気候システムには天然の振動があり短期的変動が人為的な温暖化を覆い隠すことがある、という意味。だがKeenlysideらの温度予測に納得していないReal Climateブログの気候学者の重鎮たちのグループが、一部地域が温度低下しても全球での温暖化がスローダウンすることはない方に5000賭けた。確かなことが分かるには2015年まで待たねば。

2. どこで安定化させるべきか
泥沼が今年更なる泥沼となったらしいのが、危険な気候変動を防ぐには大気中の温暖化ガスをどの濃度で安定させるべきか、である。大気中のCO2濃度は現在385ppm前後であり、多くの科学者は産業革命前と比較しての上昇を2度以下とする濃度を400〜450ppmとしている。だがNASAのJames Hansenは約350ppmというより厳しい上限が「不可逆の破滅的影響」を避けるには必要だろうと主張 (Hansen, J. et al. Columbia University 2008; http://www.columbia.edu/jeh1/2008/TargetCO2_20080407.pdf)。逆に舵を切る科学者も。オーストラリア政府の今年のレポートの中で、経済学者のRoss Garnautは2006年のNick Stern教授の勧告、550ppm, を繰り返した (Garnaut, R. The Garnaut Climate Change Review; Cambridge University, 2008; http://www.garnautreview.org.au/index.htm)。どれだけのCO2ならば過剰であるかについて、科学上の不確実さは残るのかもしれないが、現状がもし何かの判断材料になるのなら、最終的な数字について合意するとは、何が政治的に達成可能かという問題にもなるのだろう。

3. 失われた炭素はどこへ行くのか
驚くかもしれないが、科学者たちは未だに炭素が何処から来てどれだけ何処へ行くのか明確に把握していない。にもかかわらず京都議定書では、議定書を批准した先進国は土地をより良く管理し、植林し、炭素を隔離することで排出権を得られることとなっている。大気中に放出された化石燃料由来CO2の約半分は海洋、草木、森林や耕地に吸収されるが、海と陸地が各々どれだけを吸収しているのかは未だにはっきりしない (Global Change Biol. 14, 2910-2922; 2008, Nature Geoscience 1, 569-570; 2008 and Eos Trans. AGU 89, doi:10.1029/2008EO430001; 2008)。情報不足となる理由の一つは地上観測ステーションが僅かしか無く、互いに大きく離れており、大気中のCO2を稠密かつ正確に測定する技術がないからである。だが来年2機の人工衛星、NASAのOrbiting Carbon Observatoryと日本の温室効果ガス観測技術衛星いぶきが打ち上げられ、この知識の欠落を埋める助けとなる筈で、これは信頼出来る炭素会計を確立する上で不可欠である。

4. 温暖化で嵐は酷くなるのか
温暖化でハリケーンは強くなるのか、頻繁になるのか、より持続的になるのか審判団は未だ評決を下していない。全球で見ると強いハリケーンの数は1970年から75%も増えているが、人間活動が果たした役割については議論がある。今年新しい証拠が提出され、この重要な事柄について専門家たちは再考することとなった。MITのKerry Emanuelは本問題のためのモデルを開発し、温暖化により全球でのハリケーンの数は減るが強さは一部地域で増すかも知れない、とした (Bull. Am. Meteorol. Soc. 89, 347-367; 2008)。5月にはこれを支持する論文、大西洋のハリケーンは21世紀には減少する、が出た (Nature Geosci. 1, 359-364; 2008)。9月にはFlorida State UniversityのJames Elsnerらは、温暖化すれば大西洋での最大級のサイクロンは更に強くなると結論 (Nature 455, 92-95; 2008)。このように生煮えの結論となる理由の一つは、科学者たちはまだSSTとハリケーン生成の関係について局所、全球スケールで明確に理解していないためである。NOAAのGabriel Vecchiに率いられたチームはハリケーン予測の難しさをまとめている (Science 322, 687-689; 2008)。突き詰めると、絶対的な温暖化よりは大西洋などの地域が相対的に温暖化していることが恐らくは近年ハリケーンが急増していることの背後にあるのだという。そしてこの相対的な温暖化は今世紀を通じて続くと予測されている。もし彼らの仮説が正しいならば、最悪のハリケーンシーズンは我々の背後で待ちかまえている。

5. グリーンランドが溶ける速さは
気候システムが温暖化にどう反応するか、最大の不確定要素の一つはグリーンランドの氷床である。グリーンランドが完全に溶ければ海面は7メートル上昇。これは1000年以上かけて徐々に起きると以前科学者たちは決め込んでいたが、新たな証拠が発見され再検証中である。例えばグリーンランドは数世紀で溶け得る、その結果今世紀末に海面は1.3m上昇しうる、という研究である (Nature Geoscience 1, 620-624; 2008)。Scienceで報告された最近の研究では、2100年までに大幅な海面上昇が起きる可能性を詳細に検討し、もし全ての変数が極端に振れれば2m上昇しうるが、恐らくは2100年までに0.8mの上昇、がより現実的だろうとした (Science 321, 1340-1343; 2008)。グリーンランドの氷床が劇的に溶けている事は知られているが、現在の状態を気候モデルの中に正しく取り入れ、温暖化に対する将来の反応を予測することは長期の観測やデータが欠落しているため困難である。更には、科学者たちはまだ氷床の力学を十分にものにしていない。例えば地中で氷が溶けるとどのようにして氷床がスリップし動くか、である。溶けた水が氷床の底をどのように潤し、氷床が海へと滑り落ちるのに寄与するのかに光を差し掛ける研究が2つ発表された (Science 320, 778-781; 2008 and Science 320, 781-783; 2008)。だがそれを遙かに上回る未解明の謎は、温暖化は既にグリーンランドを後戻り出来ない所まで押しやっているかどうか、である。

Amanda Leigh Mascarelli, 'What we've learned in 2008,' Nature Reports Climate Change, 18 December 2008, doi:10.1038/climate.2008.142, retrieved from http://www.nature.com/climate/2009/0901/full/climate.2008.142.html

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コメント(2件)

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あけましておめでとうございます。

すごいですね。
よくもこれだけ日本語にされましたね。

AR5にむけて、どれだけ理解が進んでいくのでしょうか。
綾波シンジ
2009/01/03 12:19
あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。
こうしたまとめを見ると、我々の理解はまだまだだと改めて思います。AR5に向けて第一線の皆様には是非良い成果をお出し頂けると。
polly
2009/01/06 06:42

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